2007年10月1日

 昨日、なにげなく大食い選手権にチャンネルをあわせたところ、そのまま惹きこまれ見てしまい、最後には彼らの姿に賞賛の声をあげ感動していた。僕を感動させたものは、紛れもなくひたすら優勝にむかい限界に挑む彼らの真摯な姿にほかならなかった。


世界最速のインディアン」<THE WORLD'S FASTEST INDIAN>

2005/ニュージーランド・アメリカ 

監督:ロジャー・ドナルドソン 

主演:アンソニー・ホプキンス

 

「ボビー・ジョーンズ ~球聖とよばれた男~」<BOBBY JONES, STROKE OF GENIUS>

2004/アメリカ 

監督:ローディ・ヘリントン 

主演:ジム・カヴィーゼル

 

の2作品も、まさに夢に向かって挑戦し成し遂げる男の物語だった。

 

「世界最速のインディアン」は、バイクで世界最速記録を打ち立てた伝説のライダー、バート・マンローの物語だ。作品は、ニュージーランドの田舎町から、ライダーの聖地、アメリカのボンヌヴィル塩平原(ソルトフラッツ)を目指し到着し、世界記録を樹立するにいたるまでのロードムービーとなっている。
 実際の話としては、1962年63歳の彼は、1920年型の愛車インディアン・スカウトの改造に40年を費やし、完璧なマシーンを作りあげる。そしてソルトフラッツで時速288キロの世界記録を達成し、その後も毎年のようにソルトフラッツへ行き、67年には時速295.44キロのインディアン最速記録を出す。公式記録にはならなかったようだが、この年に出した最高時速は331キロのようだ。
 この作品にはいわゆるいい人しか登場しないが故、観ていて気持ちがとても暖かく優しくなれる。しかし実際のところは、長旅のなかでこんなにも善人ばかりと出会ったのかどうかはわからない。彼には知り合った人々を味方につけてしまうような天性の何かがあったのかもしれないが、それだけでは作品のようにいかないのが現実だ。とはいうものの、このようなことを前提に考えたとしても、作品にあえて悪人を登場させなかった監督に僕が共感した理由は、40年も夢を追い求めた初老の男には、なんらかのご褒美があってもいいじゃないか、と思えたからだった。

「ボビー・ジョーンズ ~球聖とよばれた男~」は、1930年28歳のとき、世界4大タイトルの全米アマ、全英アマ、全米オープン、全英オープンに優勝し、年間グランドスラムを達成した生涯アマチュアゴルファー、ボビー・ジョーンズの物語だ。
 実際に彼は、グランドスラムを達成するとゴルフ協議から引退し、本業である弁護士として生活していくが、弁護士業務のかたわらでマスターズゴルフトーナメントの創設や、そのマスターズが開催されるオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブのコース設計にも携わっている。
 作品では、世界4大タイトル制覇に向け苦しみながらも歩んでいくが、制覇したら引退と決めたのには理由があった。メンタル的に弱い部分があった彼は、試合の度に体調を崩す。そんな彼を見続け見守る妻への彼なりの思いやりとしての具体化が引退だった。28歳という年齢はまだまだ若いが、家族との生活に重きを置くために引退を決意する。目標であったグランドスラムを成し遂げた充足感は彼の決意に影響を及ぼすことはない。
 

 夢を実現させる期間は、早い人もいれば遅い人もいる。夢は時間軸によって左右されるものではない。夢を28歳で実現したとすれば、また新しい次の夢に向かって突き進むことをするのが人だろう。彼の場合、引退後のマスターズゴルフトーナメント創設や、オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブのコース設計が第2の夢となり、再び実現させている。
 

 ボビー・ジョーンズは裕福な家庭に育っており、短気で怒りやすく我侭な側面が作品にも描かれている。事実、ゴルフマナーが悪いためゴルフ協会委員長から出場停止勧告を受ける。そのような描写も含めると、人間的な側面では伝説のライダー、バート・マンローに酷似するような共感を僕は抱くことができなかった。しかし、あくまでも夢に向かって挑み続けるという姿勢に限っていえば、やはりその姿勢からは強い信念と想いが伝わってくる。
 

 バイクでもゴルフでも、そして大食いでも、本気で夢に挑む人の姿は、やはり見ている人に何かを与えるものなのだろう。