2005年10月23日

 

 夢を持ち挑戦し続けることは素晴らしい。だが、アメリア・エアハートの場合、ハッピーエンドの結末とはならなかった。
 第二次大戦前のアメリカに実在した天才女性パイロット、アメリア・エアハート(1897年7月24日-1937年7月)の最後のフライトを描いた

 

ラストフライト

<AMELIA EARHART: THE FINAL FLIGHT>

1994/アメリカ 

監督:イヴ・シモノー 

主演:ダイアン・キートン/ルトガー・ハウアー

 

を観た。
 作品は1937年7月、目的地である南太平洋ハウランド島(サンゴ礁上に浮かぶ小さな島)を目指してニューギニア島のラエを飛び立ち、消息を絶つそれまでの彼女の飛行機人生を綴ったものだ。

 

 アメリアが成し遂げた実際の記録がある。
1922年: 14,000フィートの高度を女性として初めて飛行
1928年: 大西洋横断に女性として初めて成功
1931年:オートジャイロでの最高到達高度記録樹立
1935年: ハワイからカリフォルニアまでの単独飛行に成功

 しかし快挙はいつまでも続かなかった。
 1937年、赤道沿いの世界一周飛行に挑み消息を絶つ。この最後のフライトはアメリア一人での飛行ではない。ナビゲータのフレッド・ヌーナンと二人での飛行だった。飛行機はロッキード・エレクトラ、ルートはアメリカの西海岸オークランドから東周りの飛行で、ニューギニアのラエに6月30日に到着している。7月2日未明、二人はラエを飛び立つ。離陸8時間後アメリアから無線報告が入りハウランド島への航路を予定通り飛行していたことが確認されているが、その後消息を絶ってしまう。


 68年が経った2005年、アメリカ政府はアメリカ人海洋探検家による1億5千万円を使った探査を行ったが、機体が見つかることはなかった。


 アメリアは実際にこんなことをいっている。


―勇気は、安らかな暮らしを得るために必要な投資だ。それを知らない人間は、小さなことにつまずき続けるだろう―


 勝気で何事にも立ち向かっていく彼女らしい言葉だが、作品では―もちろん作品に描かれているラストフライトシーンでの会話や様子は監督の推測でしかない―、アメリアが死に直面した瞬間、彼女自身の生きたいという強い願望が、目的地である小さな滑走路もないハウランド島の幻影をアメリアに見させることになる。
 このシーンで観客はアメリアの絶望の大きさを共有すると同時に、勇気の代償の大きさを知ることとなる。


 ダイアン・キートンが主演した「恋愛適齢期」でのエリンと、このアメリアはどこか共通している。二人は、気丈で弱音をはかず自分の好きなような生き方をしていて何も不満がないように見える。だが同時に、素直になれない自分に葛藤を抱いて不満ももっている。強い裏には寂しさがあり、その寂しさに負けないためには強さが必要だ。これらの作品はそんな心情の行き来をうまく描いていた作品だった。