2012年11月6日

 

9月初旬から10月半ばまで日本を留守にしていたため時間が空いてのコラムになってしまった。今回は3本を取り上げる。

 ジェフ・ブリッジス、相変わらずいい味だしてるなぁ~、という

 

トゥルー・グリット」<TRUE GRIT>
 2010/アメリカ

監督:ジョエル・コーエン/イーサン・コーエン

主演:ジェフ・ブリッジス/マット・デイモン/ヘイリー・スタインフェルド

 

を観た。
 この作品は1969年のジョン・ウェイン主演西部劇「勇気ある追跡」のリメイク。14歳の賢くて肝っ玉が据わった少女が、大酒のみの保安官とテキサスレンジャーと共に、父を殺した犯人を追うという物語。
 砂漠の荒野の映像から美しさと過酷さが同時に伝わってくる。その厳しい環境の中、反目しあっていた3人に友情が生まれ、そして、見事敵討ち。変哲のないストーリーが生き生きとしているのは、少女と大人二人とのユーモアあふれる会話があちらこちらに散りばめられていたからに他ならない。
 さらに、大人の一人がジェフ・ブリッジス。はまり役だった。もごもごしゃべり酒飲みでずぼらでだらしないが、いざとなったらヒーロー。こんなキャラクターを演じさせたらジェフ・ブリッジスにかなう役者はいないだろう。
また、鼻っ柱が強く行動派かつ理論派の少女を演じたヘイリー・スタインフェルドのおちゃめさが、より一層スクリーンに華を持たしていた。それもそのはずで、彼女はアカデミー賞助演女優賞にノミネートされている。
 
 

 日常のなにげない一コマが温かい眼差しで描かれている

阪急電車 片道15分の奇跡

2011/日本 監督:三宅喜重

主演:中谷美紀/戸田恵梨香/南果歩/宮本信子

 

もいい作品だった。
 片道わずか15分の関西ローカル線、阪急電車が舞台だ。偶然乗り合わせた普通の人々たちの人間模様がオムニバス的に綴られていく。
 登場人物は、純白のドレスに身を包んだOL、翔子。かわいい孫を連れた老婦人、時江。彼氏のDVに悩む女子大生、ミサ。庶民的な主婦、康江。地方出身の大学生、権田原美帆と小坂圭一。年上の会社員と付き合う女子高生、悦子。それぞれが、何らかの悩みを抱えている。そんな彼らに自信をもたせてくれたのが老婦人の時江だった。
 時江を通じ、それぞれが自分らしさを認識し明日への一歩を踏み出していくという脚本は、とても自然で好感が持てるものだった。
 毎日の通勤電車でこんなドラマがあったらいいなぁ~、出会ってみたいなぁ~、こんなことを感じた作品だった。

 

泣かせの壺を完璧に抑えている作品、つまり韓国作品に触れる。
 

ハーモニー 心をつなぐ歌<HARMONY>

2010/韓国 

監督:カン・テギュ主演:キム・ユンジン/ナ・ムニ/カン・イェウォン

 

は、女子刑務所が舞台で、主役は服役している女性たちだ。
 あるきっかけから彼女たちは合唱団を結成する。いがみあっていた彼女たちは合唱を通し心の交流を深めていく。
 主人公のジョンヘは、お腹の子どもを夫の暴力から守るために殺してしまうが、無事刑務所で男の子ミヌを出産する。しかし、規則により生後18ヵ月を過ぎると養子に出さなければならず、無情にも離れ離れになる日が来てしまう。歳月は流れ合唱コンクール出場のため外出が許される。会場で、思いもかけず成長した息子に会うことができるのだが、母と名乗ることは許されない。喜びと悲しさが入り混じる再開シーンは泣かせの壺の第一幕。そしてさらに悲しい第2幕が最後の最後にやってくる。
 第2幕の老婦人が、ごく普通でいい人過ぎるキャラクター設定になっているため、この幕引きはあまりにもどこまでも悲しすぎる。このようなストーリーが好きな方は、複数枚のハンカチを用意して観てください。
 
 ところで、主人公のジョンヘを演じているのは、「LOST」でジンの妻でありペク重工業社長の令嬢役、そしてきれいな英語を披露していたキム・ユンジン。
 「LOST」はファイナルシーズンまで観ていたため、映画が始まってから10分くらいは、彼女の配役に違和感があったものの、作品が進むにつれてその違和感はいつのまにか消えていた。いい女優さんでした。

 ちなみに彼女が主演している

「セブンデイズ」(2007)

<Amazonレビュー:敏腕弁護士ジヨンの娘が誘拐された。解放の条件は、ある猟奇殺人事件の一審で死刑判決を受けた犯人を釈放すること。与えられた時間は7日間。誘拐犯はあらゆる方法で弁護士にプレッシャーをかけてくる。娘を誘拐したのは誰なのか?死刑判決を受けた男は殺人者なのか。母親として娘を救うための戦いが始まる)と、
 「シュリ」(1999)

<Amazonレビュー:北朝鮮の特殊工作部隊と韓国の情報機関の戦いを描いたスパイアクション大作。ミステリー、アクションなどさまざまな要素を効果的に使い、南北分断という民族的悲劇を、韓国の情報機関員と、北朝鮮の敏腕女性スナイパー(キム・ユンジン)との悲恋物語という、誰にでも理解しやすく親しみやすいエピソードを通じて描いている。タイトルは、朝鮮半島にだけ生息する淡水魚の名前である。映画のなかでも「ある部分」で使われており、心ニクイ演出>もいい作品でした。