2009年12月13日

 

 セクシー路線寄りの役より、今回のように優しくて夫に理解があり、しっかりもののママ役の方が断然いい!と思えたのが、ヴァージニア・マドセン。今後は、是非この路線で活躍してほしい。とは言え、この作品の後は、ほのぼの系ホームドラマ的な作品には出演していないが。
 

庭から昇ったロケット雲

<THE ASTRONAUT FARMER>

2007/アメリカ 

監督:マイケル・ポーリッシュ 

主演:ビリー・ボブ・ソーントン/ヴァージニア・マドセン

 

は、夢を追い続けるお父さんと彼を支える家族の物語。
 NASAの宇宙飛行士訓練プログラムに参加したことがあるこのおじさんの夢は、もちろん宇宙飛行士。ところが、お父さんが急死したために実家の農場を継がざるを得なくなる。それでも夢は諦められず、農場の小屋でこつこつとロケットを作り続ける。すべて自費製作のため、家族は膨大な借金を背負っている。おじさんの友人でもある銀行頭取も、ついには借金の返済が難しくなったおじさんに、不本意ではあるが、農場を売却することを求める。
 また、時を同じくして、マスコミをシャットアウトした諮問会に召還されたおじさんに、ロケット打ち上げの禁止命令が告げられる。
 おじさんは、この時決意する。数日後、急ピッチでロケットを完成させ、ついに点火。しかし、ロケットは垂直に飛ぶことなく水平に飛び、ロケットはバラバラになり、おじさんも大怪我し入院してしまう。
 おじさんは夢を失いかけるが、そのおじさんを再起させるのが、妻のヴァージニア・マドセンであり、息子と娘の応援だった。その甲斐もあり、2度目の打ち上げに成功したおじさんは、宇宙飛行士として宇宙から地球を見ることになる。
 このタイプの作品では、実現が難しそうな夢ほど人は奮起し、その夢の実現に向けて突き進む。そして、その陰には必ず支えてくれる人たちがいる、というのが基本的なシナリオとなる。これまで僕は、同系統の作品を数百本観ているのだが、それでもこの手の作品に惹かれてしまうのは、やはり現実でも、このパターンが当てはまるからだろう。
 人それぞれ夢は異なるが、その大小に関わらず、誰かからの何らかのアシストがそこにはある。大げさな言い方をすれば、夢を持ち実現に向けて突き進むということは、夢を追う人と、その夢を追う人を取り囲む人々とが、それぞれの人生を共有する、とも言える。そんな視点から夢を捉えるならば、時間軸が短く実現が容易と思われるような夢よりは、時間もかかりハードルが高いと想定される夢を僕は見る。これまでも、そして、これからも。

 日本でロケットを打ち上げようとしたら、さすがに映画のようにはいかない。文部科学省のHPを見たら、当然ではあるが、安全基準だけをみても規則の数はものすごい。
 平成17年10月27日、HAロケット8号機による陸域観測技術衛星打上に関し、「ロケットによる人工衛星等の打上げに係る安全評価基準(宇宙開発委員会安全部会)」調査審議が行われ、その結果がまとめられていた。各項目を記していくと大変な長さになるため、目次のみ列記する。

目次
● 保安及び防御対策
●地上安全対策
1. ロケットの推進薬等の射場における取扱いに係る安全対策
(1) 静電気対策
(2) 保護具の着用
(3) 防護設備の使用等
(4) 推進薬等の取扱い施設に関する巡視等
(5) 発火性物品の持込み規制等
(6) その他の対策
2. 警戒区域の設定
(1) 整備作業期間における警戒区域
(2) 打上げ時における警戒区域
3. 航空機及び船舶に対する事前通報
4. 作業の停止等
5. 防災対策
(1) 防災設備の設置及び防災計画の作成
(2) 荒天、襲雷、地震時等の対策
●飛行安全対策
1. 打上げ時の落下物等に対する安全対策
(1) 正常飛行時のロケット落下物に対する安全対策
(2) ロケットが推力停止した場合の落下物に対する安全対策
2. 打上げ時の状態監視、飛行中断等の安全対策
(1) 飛行中の状態監視
(2) 飛行中断
(3) 電波リンクの確保
3. 航空機及び船舶に対する事前通報
4. 軌道上デブリの発生の抑制
(1) 軌道投入段の破壊・破片拡散防止
(2) 分離機構等
・ 落下予測域
・ 落下限界線
●安全管理体制
1. 安全組織及び業務
2. 安全教育・訓練の実施
3. 緊急事態への対応
●機構の安全対策等に対する所見

●表及び図のリスト
表1 ロケット等搭載用保安物リスト
表2 打上げ時地上安全に係る警戒区域に関する爆風等に対する保安距離
図1 ロケット等搭載用保安物概要(高圧ガス、危険物等)
図2 打上げ整備作業期間中の警戒区域(極低温点検時)
図3 打上げ時の地上警戒区域
図4 打上げ時の海上警戒区域)
図5 ガス拡散範囲及び通報連絡範囲
図6 吉信射点消火設備配置図
図7 H?Aロケット8号機の飛行経路
図8 落下物の落下予想区域
図9 ロケットの落下予測点軌跡と3分散範囲
図10 飛行安全システム概念図
図11 打上げ隊編成
図12 地上安全関連打上げ隊組織
図13 飛行安全関連打上げ隊組織
図14 自衛消防隊の組織
図15 現地事故対策本部の組織
図16 機構事故対策本部の組織

 

 無人ロケットでさえ、このような諸規制がある。これが有人となれば、さらに夥しい規制が必要になることは容易に想像される。
 宇宙飛行士になりたい、という夢に突き進むおじさんの熱い気持ちが、わかった気がする。しかし冷静に考えると、宇宙飛行士になるより、ロケットを一人で作ることの方が、よっぽどハードルが高い。おじさんがロケットエンジニア志望でなかったところが、この作品のいいところ。