1995年9月27日
初めて友達と映画館に行ったのは、小学2、3年の頃だった。その時観たのは大怪獣ガメラシリズの一作だったと記憶している。以来、今日に至るまで映画を観続けている。
この映画のコラムは1年間の連載になると聞いている。今回は第一回目ということでもあるのでテーマはやや漠然としたものになってしまうが、映画のすばらしさについて僕なりの考えを勝手きままに書かせていただくことにする。
映画を観たら誰でも記憶に残っている場面や音楽、台詞等があることと思う。それがまず一つのすばらしさだと思っている。記憶に残るというとは当然のことながら、何か印象を受けたからこそ忘れずに覚えているのである。
「招かれざる客」<GUESS WHO'S COMING TO DINNER>
1967・アメリカ
監督:スタンリー・クレイマー
主演:キャサリン・ヘプバーン、シドニー・ポワチエ
というアメリカ作品があり人種間題を描いている。
ストーリーは、サンフランシスコの中流白人家庭の娘が、旅先で結婚を誓いあった男性をディナーに招くことから始まる。電話をもらった家族は娘の結婚に期待するが、その娘が招いた男性は黒人だった。彼女の父親は新聞社を経営し、人種差別反対を強く訴えてきた人間ではあったが、この結婚には反対した。そして又彼の父親もこの結婚に反対した。しかし、二人はそれぞれの母親の理解もあり最後には、父親からの結婚を認めてもらうことになる。
ストーリーは、ざっとこんなところだ。
映画評論家の間ではこの作品に関して意見が真っ二つに別れたそうだが、僕はこの作品を評価している。
この作品の中で、記憶に残っている台詞がこの映画にある。結婚を許してくれない父親に彼はこう言うのである。
―父さん、あなたは自分を黒人だと思っている。でも僕は自分を人間だと思っている―。記憶に残る台詞の一つである。
二つ目のすばらしさは、疑似体験ができることである。
全く自分の知らない分野を2時間前後で経験できるのである。ある時は刑事であり、またあるときはフランンケン・シュタインであることもあり得る。僕が映画を観るときは、完全に自分がその主人公になってしまうタイプなので余計に疑似体験の感覚が強いのかもしれない。又、映画を通して知らないことや経験したことのないことを体験すると、それがいつ実生活で役にたつとも限らない。
「13日の金曜日」という映画がある。
ストーリは皆さんご存じのとおり、女性主人公がマスクを覆ったジェイソン君に襲われて、恐怖のどん底の中でジェイソン君と戦い、最後はやっつけるというものだ。案外これが役に立つかもしれないのだ。
例えば、女性が終電で駅に着いた。自宅まで15分歩くとする。誰かが彼女の後をつけてくる。足早に歩けば相手も足早に。コツコツと不気味な足音が静寂の闇に木霊する。そしてさらに足音が速くなり彼女を執拗に追いかける。
ここで疑似体験が生きてくる。
普通は恐怖のあまり逃げることで精一杯のはずだが、襲われる女性を何度か映像を通し経験していると、誰か助けてー、と叫んでみたり、近くの家に助けを求めに行くなどの行動を起こせる可能性が増えるのではないかと思うからである。
日常では、このようなことはそう起こるものではないだろうが、万が一起こったその時はきっと役に立つはずである。