1996年11月13日

 

 昨日ビデオでリチャード・ドレイファス主演の

 

陽のあたる教室」<Mr.Holland's Opus>

1995/アメリカ
監督:スティーヴン・ヘレク
主演:リチャード・ドレイファス/グレン・ヘドリー

 

を観た。

 物語は、アメリカがベトナム戦争へと突入していく1965年から30年後の1995年までのケネディー高校を舞台にしている。内容は音楽教師と高校の生徒たち、そしで聾唖者である息子との心の触れ合いを感動的に描いた作品だった。
 そもそも彼は教師になるつもりはなかった。なぜならば、作曲をして生計を立てることが夢だったからだ。しかしそれはままならず、致し方なく教鞭を執ることになる。最初の頃は音符も読めない生徒に愛想がつき、教えることにもいやけがさしかけていた。そんなとき校長からちょっとしたアドバイスをもらい、自分なりに生徒と触れ合う方法をみつけていく。生徒との触れ合いは、二人の少女と青年を中心に描かれていく。そんな彼らとの接点をもつことで、次第に彼は教師という職業が好きになっていた。そのときだった。生まれた息子の聴覚が10%しか正常に機能していないことに気づく。しかし、ー家はその障害を家族で乗り越えていく。
 時は瞬く問に週ぎ去っていった。30年後、政府の方針で学校予算が削られることになり彼は学校を去らなければならななる。その最後の日、生徒及び教師たらが彼にすばらしい贈り物をすることになる。それは彼が作曲したアメリカ交響曲を彼の指揮で演奏してもらうことだった。この企画を立てたのは、今は州知事になっでいるかつてのあの少女だった。
 彼女が彼に贈ったスピーチがすばらしかった。

―先生は、私を含め大勢の人間の人生を変えました。先生はご自分の人生を誤ったとお考えかも知れません。授業の合間にシンフォニーを書き、いずれそちらの方面で富と名声を得るとお考えでした。でも今は富はなく、この地域は別として有名ではありません。それでご自分を人生の失敗者とお考えなら、それは大きな間違いです。先生は富や名誉を越えた成功を収められたのです。見てくださいい。あなたはここにいる全員の人生に触れ、一人一人をよりよい人間に育てたのです。払たちがあなたのシンフォ二ーで、あなたの作品のメロディー。そして音符なのです。あなたの人生の昔楽なのです―

 彼は舞台にあがりアメリカ交響曲を指揮することになる。カメラは彼を誇りに思い、彼を愛している妻と息子の顔、彼を慕い尊敬している生徒達の顔をスクリーンに映し出す。そして再度カメラは彼の指揮している姿をとらえエンディングを迎える。教師である前に人間としての純粋な姿を暖かく優しいタッチで描いた作品だった。

 しかし現場の教師からは、この作品は偽善であり欺蹄だ。現実はこんなに簡単できれいじゃないとの声が飛ぶかも知れない。それくらい現場の最前緯は大変であることは想像がつく。というのも僕は学生時代の4年間、学習塾でアルバイトながら教師をした経験があるからだ。そこでこれから、塾のアルバイト教師と文部省直下の教師の役割と責任には雲泥の差があることを認識しているという前提で教師について少し書いてみたい。

 僕はかつて中学1~3年生のクラス30~35人を、週3日、1日3コマ(1コマは45分)の英語授業を受けもっていた。正直いってどうしても好きになれない生徒もいた。当然その生徒も僕のことを好きになれなかったはずだ。映画のようにはうまくいがないことがあったのは事実だが、うまくいかなくても人を媒介にしている以上、感覚的なものもあり、ある意味ではやむを得ないことであろう。しかし先生と呼ばれた以上、中途半端な姿勢で臨むのだけは避けたかった。そしてわかったことがあった。こちらが真剣に本気で生徒と向き合うと、大多数の生徒は同じように本気で答えを返してくれるということだった。一般的に昨今では、塾は勉強だけを教えるところで、学校はプラスアルファーとして道徳や学んだ知識の生かし方なども教えるところ(本来、道徳や倫理はそれぞれの家庭で教えられるべきもののはずなのだが)といっていいであろう。だがこの塾は躾にも大変厳しかった。当時近所の親たちからは、勉強よりも躾をきちんとしてくれる塾、という本筋ではないところでも評判がよかったのを覚えている。当時学生だった僕が生徒達に盛んにいっていたのは、自分が本当に熱中できるものをさがすこと。本気になれば夢はがならず叶うこと。人の悪口をいわないでその人の良いところを探すこと。などと教師ずらして語っていた。
 こんな話を真剣に開いてくれた生徒たちと今でも交流がある。4年前日本を発つときに成田空港まで見送りに来てくれた生徒たち。昨年久々に日本に帰ったときパーティーを開いてくれた生徒たち。人が人を感じ信じるとき、そこには目には見えない何かの絆が必ず生まれている。それをこの映画は再度僕に思い出させてくれた。素直な気持ちでこの作品を観れば、きっと忘れかけていた何かを取り戻すことができるのではないだろうか。本当にいい作品だった。