1996年6月12日

1980年~1989年のアカデミー作品賞は、「普通の人々」「炎のランナー」「ガンジー」「愛と追憶の日々」「アマデウス」「愛と哀しみの果て」「プラトーン」「ラスト・エンペラー」「レインマン」「ドライビング・ミス・デイジー」の10作品だった。
 娯楽の定義は人によって違ってくるのだが、僕自身の感想をいうと、80年代の作品は70年代と比較すると、概してより娯楽性に富むものが多かったように思える。
 僕にとって映画における娯楽の定義の優先順位は、人間心理が丁寧に優しさと暖かさをもって描かれていること、涙が止まらなくなるくらい主人公の言動に感動できること、作品テーマがシリアスであること、の順になる。この3つが作品を評価するときに大きな基準となり、作品のジャンルにあまり関係なくどの分野にも適応される。この3つを基に80年代の作品を振り返ると先ほど述べたような感想になる。さっそくテーマ別に作品を振り返ってみる。

 まずは、SF部門だ。
遊星からの物体X」醜い蟹顔はユーモラス。
未来警察」ロボットの氾濫するような社会がいずれくるのだろうか。
ブレード・ランナー」2020年の世界では、ロボットではなくレプリカント(人造人間)が生産されていたが、あれほどまでに人間そっくりだと気味が悪い。炎のランナーとは全く別のお話でした。
バック・トゥー・ザ・フューチャー1・2」デロリアンが欲しい。
ターミネーター」コメディー版、ミセス・ターミネーター<主演キャシー・ベイツ>を制作してもらいたい。
コクーン」サブタイトル~老人とまゆ~。
第5惑星」異性人との究極の交流。
砂の惑星」フランク・ハーバートの大ベストセラーだが、SF好きの友人いわく、この原作を映画化すること自体に無理があるよ、といっていた。原作を読んでいないのでなんともいえないが、映画はとてもつまらないものだった。
アウトランド」ショーン・コネリーのキャスティングはミスだった。
宇宙の7人」荒野の7人の宇宙版。
「スペース・キャンプ」「バック・トゥー・ザ・フューチャー1・2・3」、「ハワード・ザ・ダック」のリー・トンプソンの溌剌とした演技は、きっと地をいっていた気がする。
スター・ウォーズ 帝国の逆襲・ジェダイの復讐」9作まで制作する夢はどうしてしまったんですか。
2010年」2001年宇宙の旅の続編。2001年で謎だった部分が解明されていく作品だったが、僕個人としてはつまらなかった。
スター・トレック2~5」英単語豆知識-STAR TREKのTREKは旅、移住という意味です。
スターマン 愛・宇宙はるかに」監督は、あのジョン・カーペンター。180度作風が変わりロマンティック・ファンタジーになってしまった。ジェフ・ブリッジスがとてもいい。
スター・ファイター」ファミコン訓練の賜物。
エイリアン2」エイリアン4、20世紀フォックスが制作を決定。主演はシガニー・ウイバー、ウィノナ・ライダーのようだ。
 まあ、そんな中で多くの人が素直に認めるであろう上質のSF作品には、「E・T」が上げられるだろう。まだ字幕スーパーは読めないし英語も理解できない3歳の子供が、ある場面で母親にいったそうだ。―ETはおうちに帰りたいんだよ―。分かりやすく優しさに溢れて制作された本当に高品質の作品だった。
 さて、上記作品を押しのけての僕のSF部門お気に入りナンバー1作品は、「アビス」だ。
 深海で座礁してしまった原子力潜水艦の調査と救助に行ったクルーたちの艦内での人間模様を、舞台劇のようなタッチを基に毅然と描いた作品で、それにプラスアルファーとしてファンタスティックなSFXが入り込み、異性人との交流を感動的に描いた作品だった。主演は「アポロ13号」のエド・ハリス。彼が仲たがいしていた妻を蘇生させようとするその姿は実に崇高であり、人間というもののすばらしさを改めて感じさせられた。映像といい娯楽性といい申し分のない作品だった。SF部門はこれくらいにしておこう。
 次回以降のテーマについて予記しておく。「サスペンス」「シリアス」「刑事・アクション」「青春」「ほのぼの」「男と女 コメディータッチ」「男と女 しっとりタッチ」「ホラー」「その他」こんなテーマを掲げて、何回の連載になるかわからないが、それぞれのテーマに沿って80年代の映画を振り返っていきたい。