1997年3月12日

前回に続いてサイコ野郎が登場する作品を紹介していく。
 

不法侵入」<UNLAWFUL ENTRY>
1992/アメリカ
監督:ジョナサン・カプラン
主演:カート・ラッセル/レイ・リオッタ


 LAの豪邸に住んでいるマイケルとカレンは、強盗事件を契機に警官ピートと親しくなるが、カレンに魅せられたピートは二人の家に忍び込み、カレンを自分の物にしようとする。通常、市民は相手が警察官であるならば、ふと気を許してしまうこともあるはずだ。この作品の恐ろしさはサイコ野郎が信頼の於ける警察官だったところにある。

危険な情事」<FATAL ATTRACTION>
1987/アメリカ
監督:エイドリアン・ライン
主演:マイケル・ダグラス/グレン・クローズ


 アレックスは一夜をともにした弁護士のダンにしつこく付きまとい、やがて彼の家族にも危害を加えようとする。浮気は怖い、という単純な問題ではない。彼女の場合は完全なサイコパス・ウーマンだったから怖いのだ。

硝子の塔」<SLIVER>
1993/アメリカ
監督:フィリップ・ノイス
主演:シャロン・ストーン/ウィリアム・ボールドウィン


 ガラス張りのマンションの各部屋には、隠しビデオが仕掛けられており、オーナーは秘密のモニター・ルームから住人の生活を24時間監視していた・・・.。他人の生活を覗き見したいという願望を持ってる人はいるはずだ。ただここまでやると立派なサイコ野郎で、風呂屋の番台から背伸びして女湯を覗くのとは犯罪のレベル度合いが違う。

ナチュラル・ボーン・キラー」<NATURAL BORN KILLERS>
1994/アメリカ
監督:オリヴァー・ストーン
主演:ウディ・ハレルソン/ジュリエット・ルイス


 ミッキーはマロリーに性的虐待を加えた父と、それを見て見ぬふりした母を殺し、ルート666をひたすら走る。さらに666沿いで52人の殺人を犯した・・・。ゲーム感覚で人を殺す二人はやはりサイコ野郎だ。

白いドレスの女」<BODY HEAT>
1981/アメリカ
監督:ローレンス・カスダン
主演:ウィリアム・ハート/キャスリーン・ターナー/ミッキー・ローク


 まさに典型的なファム・ファタール(運命の女)ものの秀作。官能的な魅力をもつ女の虜になった男は、女の筋書き通りに夫を殺す。さらに女は彼をも殺そうとする・・・。代表的なパンプ妖女を演じているK・ターナーの妖艶な官能美と見事な脚線美はサイコ野郎のイメージとはかけ離れ過ぎているが、やはり殺人を犯すということは、サイコ野郎といえる。ただし理性と知性を兼ね備えたインテリ・サイコだ。

屋根裏部屋の花たち」<FLOWERS IN THE ATTIC>
1987/アメリカ
監督:ジェフリー・ブルーム
主演:ヴィクトリア・テナント/クリスティ・スワンソン/ ルイーズ・フレッチャー


 父親の事故死によって、母親と4人の子供たちは祖母の邸宅に住むことになるが、子供たちは屋根裏部屋に隔離されてしまい、日を追うごとに衰弱していく。母親と祖母に殺されてしまうと感じた子供たちは脱出を試み、衝撃的で悲惨なラストシーンを迎えることになる・・・。

 人間が動物と違う一つは、自分の子供を殺したりしないところにある。この基本的な摂理を失ったとき、人間は人間でなくなる。この母親は人間を放棄した究極のサイコ野郎だ。精神的な病を患っていたにしても、親は無意識に子供を守るという防衛本能を維持している、と僕は思うからだ。
 

パーフェクト・ファミリー」<PERFECT FAMILY>
1992/アメリカ
監督:E・W・スワックハマー
主演:ブルース・ボックスライトナー/ジェニファー・オニール


 男は隣に住む子供のいる未亡人を愛してしまい、自分こそが彼女の夫にふさわしいと思い込み、強引に彼女や子供に近ずいていく。

 一家の写真を盗み、自分の写真を亡夫の写真の上に張り合わせ、偽りの家族写真を合成し恍惚とした表情でそれを見つめる男は、超サイコ野郎にほかならない。

 心理学用語でいえば、妄想性人格障害、演技性人格障害、自己愛性人格障害の3つにあてはまるのではないだろうか。

危険な遊び」<THE GOOD SON>
1992/アメリカ
監督:ジョセフ・ルーベン
主演:マコーレー・カルキン/イライジャ・ウッド


 母を失った少年が叔父夫婦のもとに預けられる。いとこのヘンリーはいたずらが好きだったが、やがてヘンリーの危険な遊びは度を越し始めていく。そして少年はヘンリーが母親の殺害を計画していることを知る。

 この作品のサイコ野郎は子供であるが故に尚恐ろしい。子供は無邪気であり愛らしい反面、残虐性を秘めている。その側面を真っ向から扱ったのがこの作品で、僕は子供の育て方、言動、態度などに再度注意を払う必要があると考えさせられた。

 自問自答だが、ラストシーンでのあの母親の選択を、僕が同じ立場だったとしても果たしてできただろうか?

マザーズボーイ 危険な再会」<MOTHER'S BOYS>
1992/アメリカ
監督:イヴ・シモノー
主演:ジェイミー・リー・カーティス/ピーター・ギャラガー


 夫と子供を捨てた女が、突然3年後に戻ってきたが、再婚を決めた夫は女には冷たかった。激怒した女は息子を手なづけ夫の婚約者を殺し、新たな家庭の幸福を破戒しようとする・・・。

 子供を利用しての殺害計画なんてもってのほかだ。だからサイコ野郎は怖い。

 

 

 2回にわたってサイコ特集を組んでみたが、一見普通の人、しかしその実態は、サイコ野郎というのが我々の周りに存在するということがお分かりになったと思う。外見や多少の付き合いでは、相手がサイコ野郎と分からないところが現実的に恐怖を醸し出す。
 国が富み文明が近代化すればするほど、人心は荒廃し新たな問題が噴出してくる。その中の一つがサイコ野郎の増大にほかならない。
 先進国に席を置きレベルの高い教育、医療、福祉などを享受できる機会を得ている反面、サイコパスな人間と隣合わせに暮らしていることもまた厳然たる事実なのである。