1997年7月8日

 1月2日未明、ロシア船籍ナホトカ号の原油流失事故が島根沖で発生した。環境に対する影響度合いが懸念されている。
 1976~1995年の間に起こった世界の原油流失事故は約6100件に上る(戦争に起因するものは除く)。では内訳はというと、83%が7トン以下の小さな流失事故で5104回。7~700トンクラスで769回の13%。700トン以上のクラスで236回の4%となっている。
 過去の大きな流失事故を見てみると20万トンを越える事故が何度か起きている。
1979年Atlantic Empress号28万トン(西インド)
1991年ABT Summer号26万トン(アンゴラ)
1983年Castillo de Bellver号25万7千トン(南アフリカ)
1978年Amoco Cadiz号22万7千トン(フランス)
 事故の原因としては船体破損、暗礁への乗り上げ、衝突、火災・爆発の順になっている。

 

 今回は船に関する映画を取り上げてみたい。
 僕のお気に入りの作品は、 「ポセイドン・アドベンチャー」(監督はロナルド・ニームで「メテオ」「オデッサ・ファイル」などを手がけている。主演は、G・ハックマン、A・ボーグナイン)だ。
 ストーリーは、豪華客船ポセイドン号が大津波に襲われ転覆してしまい、そこに生き残った人達の生死をかけた脱出劇が展開される、というものだ。懸命に皆を助けようとする神父役のG・ハックマンもよかったが、太っちょオバサン、S・ウインタースの勇気とユーモアに魅せられ、彼女の死に泣いた。
 

さすらいの航海」も忘れがたい(監督は、S・ローゼンバーグで、「暴力脱獄」「ブルベイカー」などを手がけている。主演は、F・ダナウェイ、K・ロス、R・グラント、O・ウエルズ)。

 1935年外国移住を望む900人あまりのユダヤ難民を乗せたドイツ客船がキューバにむけて出航したが、ナチスの仕組んだ計画のためキューバにもアメリカにも乗り入れを拒否され、大西洋を逆行することになる。

 希望の灯が次第に消えていく中でも、強く生きようとする気高い彼らの姿は、人間の誇りそのものだった。実話を元にして制作された。
 

白い嵐」にもいろいろと考えさせられた(監督は、L・スコットで「エイリアン」「テルマ&ルイーズ」などを手がけている。。

 主演は、J・ブリッジス)。航海を通して仲間とは秩序とはそして人間とは何か、を学ばさせるべく帆船アルバトラス号は12人の生徒を乗せて出帆した。しかし船は思わぬ嵐に遭い生徒数名が死んでしまう。裁判で彼は船長としての責任を問われるが、生死をともにした青年たちはその裁判で彼を弁護する。

 「陽のあたる教室」「いつも心に太陽を」の海洋版といっていいだろう。
 帆船という教室の中で、青年たちが学んだことのすばらしさは測り知れない。子供にいろいろと何かを学ばせたいと思うのは親の常だろう。しかし一番大切なことは、まず親が子供に対し、つまり船長(親)としての役目を船員(子供)に対して十分に果たしているかどうかだ。なぜなら、船長がきちんと役目を果たして、初めて船長は船員から絶対の信頼を得られるはずだからだ。


 この他に「カット・スロート・アイランド」「ク レムゾン・タイド」「U ボート」「白鯨」「原子力潜水艦浮上せず」「海底2万マイル」「SOSタイタニック 忘れえぬ夜」「レイズ・ザ・タイタニック」などの作品があった。

 ここでタイタニック号の沈没について触れてみたい。
 タイタニック号、およそ4万5千トンは処女航海として、1912年4月14日、イギリスのサウサンプトンから2227人の乗客を乗せニューヨークへと旅立ったが、カナダのニューファンドランド島沖で氷山に接触し短時間で沈んでしまい、1500人以上もの人命が失われたのだった。当時事故原因究明のためあらゆる計算や推測がなされたが、なぜ3時間にも満たないうちに沈没してしまったのか、という決定的な答はついに掴めなかった。
 事故より73年後の1985年、無人ケーブル式潜水艇アルゴ号が、深さ1万2612フィートの海底にタイタニック号を発見した。船は船首部と船尾部の二つに引き裂かれていた。
 1986年、有人海洋調査潜水艇ノチール号が船尾部分に散乱している遺品およそ150点を回収。現在それらの遺品はロンドンの国立海洋科学博物館に展示されている。
 80年以上たった現在では、沈没原因はほぼ解明されている。それはタイタニック号の船体に使用されていた鋼鉄が脆弱だったからという結論だった。氷山と接触したとき鋼板は曲がったのではなく裂けたのだった。調査を担当したファーガソンは「当時、脆性破壊という概念はだれももっていなかった」といい、調査チームのチーフだったブラスコは「造船技術が冶金工学の先をいってしまったんだ」と語っている。

 「レイズ・ザ・タイタニック」という作品は海底からタイタニック号を引き上げるという内容だった。海中からザバーンと船体が浮かび上がるシーンは壮観だったが、すでにおわかりのように実際は真っ二つに裂けていて、映画のようにはなりようがない。しかしそれを可能にしてしまうところが映像の魔術師、映画ならではのよさなのだ。