2011年2月11日

 

 

今回取り上げる6作品は、いずれも実話に基づいている。以前も記したが、僕がつける○作品には、実話を基に制作された作品が多く含まれている。ただし事実が事実として歪曲されることなく描かれているか、バイアスがかかりすぎていないか、制作者のご都合主義になっていないか、プロパガンダの要素が強すぎないか、など意識して観ることは必要だろう。
 制作する側が作品になんらかのメッセージを込めるのはごく当たり前のことだろう。従って制作者の立ち位置を把握した上での鑑賞であれば、ある思想的な背景がたとえ込められていたとしても、鑑賞する側は余裕を持って事実のみを注視し、その上で、その事実に対する自己見解を抱くことができるだろう。

 

ブラインド・ヒル」<THE TUSKEGEE AIRMEN >
1986/アメリカ 

監督:ロバート・マーコウィッツ 

主演:ローレンス・フィッシュバーン/ジョン・リスゴー
 
 第二次世界大戦中、黒人だけで編成された戦闘機部隊、「Red Tail Angel」と呼ばれる第332戦闘航空群の「第5航空軍第99戦闘飛行隊 通称:タスキ-ギ航空隊」の活躍が、人種差別と戦う姿とともに描かれている。 

 

作品背景
1940年9月:ルーズベルト大統領、バークウォズワースビル法に署名し黒人徴兵に踏み切る。
1942年:アラバマ州タスキーギ基地に黒人パイロット養成コースが設立される。
 この部隊は1944年から1945年4月までの北アフリカ及びイタリアでの輝ける実戦では、1,500回以上のミッションをこなしている。輝ける戦績としては、約 200回に及ぶドイツへの爆撃機隊の護衛任務でドイツ敵機によるアメリカ機の損失をまったく出さなかったことだ。

 

ウェイヴ」<DIE WELLE>
2008/ドイツ 

監督:デニス・ガンゼル 

主演:ユルゲン・フォーゲル/フレデリック・ラウ
 
 1967年、カリフォルニアの高校のカリキュラムで行われた、「ナチスの独裁政治を繰り返さないため、実際に独裁政治を行ってみる」、というファシズムをシミュレーションする特別授業が招いた事件が基になっている。
 最初はこの授業に否定的であった生徒たちが次第に全体主義へと染まっていき、全体主義を否定した者への否定がエスカレートしていく過程は恐ろしい。
 似たような作品として、

 

es[エス]<DAS EXPERIMENT>(2001/ドイツ)

 

という作品がある。
 この作品は、1971年にアメリカのスタンフォード大学で実際に行われたスタンフォード監獄実験を元にしている。実験内容は、新聞広告で募集した被験者を無作為に、刑務所の囚人と看守の役を演じさせる、というものだったが、想像していた以上に危険な実験であることが判り、予定よりも大幅に短いわずか7日間で中止されている。
 es[エス]では、新聞広告によって募集された20人の男たちが、ドイツの大学地下に設置された擬似刑務所で「看守」と「囚人」に分けられ、それぞれ与えられた役になり切り2週間生活するという設定だ。
 実験であったはずの囚人、看守の役割を演じるという行為が、次第に被験者を本気にさせ、看守役の被験者は囚人役の被験者に対し、屈辱的な虐待を行い始める。もとは普通の人間だったはずの看守役の被験者は、実験を行ううちに、自らの心の中に潜むサディズムを増幅させ、囚人を人間扱いせず、屈辱を与え、それは度を過ぎた虐待行為へと発展していき、そしてついには・・・という内容だった。

「落ちこぼれの天使たち」<STAND AND DELIVER>(1987/アメリカ)
「ムルデカ 17805」(2001/日本)
「バウンティ/愛と反乱の航海」<THE BOUNTY>(1984/アメリカ)
これら実話に基づく3作品のコメントは、また別途設けることにする。