2014年2月16日

おとなのけんか」<CARNAGE>
2011/フランス・ドイツ・ポーランド

監督:ロマン・ポランスキー 
主演:ジョディ・フォスター/ケイト・ウィンスレット/クリストフ・ヴァルツ/ジョン・C・ライリー

 

この作品は、マンションの一室で繰り広げられる登場人物4人のみで構成された舞台劇だ。この舞台劇は多くの言葉で埋め尽くされており、多様化された状況設定が用意されている。また、テンポが速いため、時間にして79分の作品がとても短く感じられた。

 

内容はいたってシンプルだ。ケイト・ウィンスレット、クリストフ・ヴァルツ夫妻の子供が、ジョディ・フォスター、ジョン・C・ライリー夫妻の子供の歯を棒で殴って折ってしまったため、加害者の両親が謝意を伝えに被害者の家庭を訪れるところから始まる。


 最初は、穏便に大人としての和解話が進行すると思われたが、次第に双方の応対や言葉に棘が生じ、ついには気持ちがヒートアップしてしまい、家庭対家庭の批判合戦になっていく。
 

舞台の演出はさらに続く。
その中傷・批判合戦は、男同士対女同士、そして、夫婦での内輪もめ、というように刻々と状況が変化していき、最後は、舞台の初期設定である家庭対家庭の大人の喧嘩へと舞い戻っていく。

 

薄っぺらい世界平和や人道・人権主義を唱える妻と母親を演じるジョディ・フォスターの役は、実にはまり役だった。女版アルパチーノと言ってもいい。


 自分の語る理論が屁理屈であることに気づかない鼻もちならない人物で、攻撃的、感情的、かつ、ただただ自己陶酔するための言葉を多用する嫌味な女性を本物らしく演じていた。


 観客が、本当にこの人は、そのような性格なのだろうな、と思わせるような真実味がない演技なしでは、特にこのような空間舞台劇では面白さが半減する。しかし、彼女の出演により作品は最高の仕上がりになっていた。


もちろん、ほかの3人にも同じことが言える。


 各個人に既述資質が問われることが前提であることはいうまでもない。その上でのコンビネーションプレイが、この4人の舞台劇を上質な作品に仕立て上げていた。

 

ロマン・ポランスキー監督は、多くの作品を手がけているが、僕好みの作品は「戦場のピアニスト」(2002)「死と処女(おとめ)」(1995)の2作品になる。

 「死と処女(おとめ)」という作品も、密室である部屋が舞台だ。登場人物はシガーニー・ウィーヴァー 、ベン・キングズレー、スチュアート・ウィルソン3人のみ。

 

 作品概要をAmazonから引用しておく
【嵐の夜、ポーリナは夫ジェラルドの帰りをひとり待っている。ようやく帰宅したジェラルドは、途中でタイヤがパンクし、通りすがりの親切な男の車で送ってもらったという。その男・ロベルトの声を聞いて、ポーリナは震え上がる。それは数十年前、拘束され目隠しされた彼女を何度も陵辱した男の声だったのだ……。辛い過去の痛みと訣別するため、ポーリナは復讐を実行に移す。独裁政権崩壊直後の南米を舞台に、「死と乙女」の調べに乗せて繰り広げられる傑作心理サスペンス。】

 

最後に、「おとなのけんか」の原題である「CARNAGE」は「大虐殺」という意味だ。