アメリカで有名な未解決事件のひとつである、ホッファ失踪事件を取り上げた作品

「ホッファ」＜HOFFA＞

1992／アメリカ　

監督：ダニー・デヴィート　

主演：ジャック・ニコルソン／ダニー・デヴィート

を興味深く観た。
　不況色漂う1930年代のアメリカ、ジミー・ホッファことジェイムズ・リドル・ホッファは全米トラック運転手労組（Teamsters Union）を組織する。そしてTeamsters Unionは大きな組織へと成長する。やがて彼は会長として君臨し、時のケネディ政権にも比べられる程の政治力を得るにいたる。しかし時は経ち、1975年7月30日、ダーク・グり－ンの74年型ポンティアック・グランヴィルに乗り、近くのブルームフィールド・タウンシップにあるメイチャス・レッド・フォックスレストランで人に会うと妻に言い残し外出した彼が、ミシガン州デトロイト郊外の自宅に戻ってくることは二度となかった。

　映画では彼が労組を組織してから殺害されるまでの生涯が描かれている。そこには年金基金の投資先としてのマフィアとの癒着関係が描かれており、1950年代のマクレラン委員会（労働分野における不適正活動に関する上院委員会）の首席法律顧間をしていたロバート・ケネディとの対峙も描かれている。そして、連れ去られ殺害されたと考えられているメイチャス・レッド・フォックスレストラン駐車場でのシーンも。ラストの殺害シーンについては、事実もこのシーンとほぼ同じだったのだろう。実際に残された証拠やその後の捜査で判明してきたひとつひとつの事実を積み上げていけば、やはりこのような結論となりこのような映像になるのであろう。

　この作品に○をつけた理由は二つあった。ひとつはこのような興味をひかれる実話を知ることができたこと。ひとつはやはりニコルソンの不敵な演技が冴えていたこと。あくが強く個性派といわれる所以だが、ここ数年で僕の観たニコルソンの「恋愛適齢期」「アバウト・シュミット」の役は、今ひとつ好きになれなかった。しかし、「ホッファ」では、僕のイメージするニコルソンがいた。
　
　労組ついでで、アメリカ労組の現状を見てみる（ワシントンD.C.労働統計局にある組合情報より）。簡単に言うと、従来型の大企業（航空や自動車会社等）には組合があるが、中小企業では労働組合は結成されない傾向にある。また年齢が若い社員は組合活動に興味がないらしく、そのため新興ハイテク産業企業に組合はほとんどない。このような傾向は数字でも見て取れる。組合加入者の割合を見ると、1983年に20.1％だったものが、2005年には12.5％と減っている。今度は企業の組合加入率をみてみる。民間企業の労働者の組合加入率7.8%に対し、公共企業では36.5%と5倍近い。これは、教員や警察官、消防士等の強い組合が含まれているためである。職種別の組合加入率が高かったのは教育、訓練、図書館関係（38.5%）、保安関係（37.0%）と続き、加入率が低かったのは、販売関係（3.3%）、農業、漁業、林業関係（3.9%）となっている。 男女別では、男性13.5%に対し女性11.3%と拮抗しているが、20年前の男女加入率の開きは10％ほどあった。差が減少傾向にあるのは男性加入率が落ちてきているためである。人種間では、黒人の加入率は15.1%、白人12.2%､アジア系11.2%、ヒスパニック10.4%となっている。年齢層では45～65歳の16.5%に対し、16～24歳の加入率は4.6%と低い。従業員の加入率は全米平均で12.5%で、平均以上の加入率がある州は19州（ニューヨーク州26.1%、ハワイ州25.8%、アラスカ州22.8%など）、平均以下の加入率の州はワシントンDCを含め31州（サウスカロライナ州2.3%、ノースカロライナ州2.9%）となっている。組合員数を見てみると、全米総組合員数1570万人のうち、約半数の790万人がカリフォルニア州、ニューヨーク州、イリノイ州、オハイオ州、ニュージャージー州に居住している。
　
　締めくくりは、組合を題材にした僕の○作品3つをあげる。

「フィスト」＜F.I.S.T.＞
1978／アメリカ　監督：ノーマン・ジュイソン　主演：シルベスター・スタローン　
概要：1937年オハイオ州。待遇改善のためFIST（全米長距離トラック輸送組合）に加入、主張を続け、ついにユニオン・リーダーへと上り詰める長距離トラック運転手ジョニーの姿を見つめた社会派作品

「地の塩」＜SALT OF THE EARTH＞
1953／アメリカ　監督：ハーバート・Ｊ・バイバーマン　主演：ホアン・シャコン　
概要：鉱山労働者たちのストライキの様子を、様々な差別問題も散りばめ描いた社会派作品

「ノーマ・レイ」＜NORMA RAE＞
1979／アメリカ 　監督：マーティン・リット　主演：サリー・フィールド　
概要：組合活動を通して人間としても成長していく主人公の姿を描いた社会派作品。
この作品でサリー・フィールドはアカデミー主演女優賞受賞