208年2月24日

 

 俳優で作品を選ぶことは多々ある。


 「ラブソングができるまで」

<MUSIC AND LYRICS>

2006/アメリカ 

監督:マーク・ローレンス 

主演:ヒュー・グラント/ドリュー・バリモア

 

は、予想通りの展開で楽しめた。意外性のある作品もいいが、思ったとおりにシナリオが進む作品も時にはいい。
 ヒュー・グラントが出演すれば、人はいいが不器用で冴えない男のロマンス成功物語。ドリュー・バリモアが出演すれば、もてない少し内気な女の子の恋愛成就物語。このようなプロトタイプは、意外性のない分だけ、つまらないと思えるかもしれないが、ある意味では安心して観ることができる水戸黄門的な作品となる。
 水戸黄門的な作品という捉え方では、二人の役柄は毎回同じようなものだが、もちろん場面設定や展開は異なる。そのような意味では、やはり彼らが演じるためのピッタリの脚本があるから、そして秀でているからなのだろう。二人の魅力がいかんなくなく発揮された作品だった。

 深く重い作品だったが、内容で選んだ作品は

 

ツォツイ」<TSOTSI>

(2005/南アフリカ・イギリス 

監督:ギャヴィン・フッド 

演:プレスリー・チュエニヤハエ

 

フリーダムランド」<FREEDOMLAND>

(2006/アメリカ 

監督:ジョー・ロス 

主演:サミュエル・L・ジャクソン/ジュリアン・ムーア

 

の2本で見ごたえがある作品だった。


 
ツォツイ」は、南アフリカの現状を背景にした作品だ。犯罪と暴力にまみれたスラム生活者の一人である、”不良”を意味するツォツイと呼ばれる少年の気持ちの変化が丁寧に描かれている。
 夢も希望もない日々の生活で、彼の心は荒んでしまっている。しかし、誘拐した赤ん坊の世話をすることで、溢れでる世間や自分に対する激しい怒りの衝動が次第に穏やかなものへと変わっていく。南アフリカでなくても、罪を犯した少年は罰を受けなくてはならないのだが、スラムでの荒んだ彼の気持ちに変化が起きたきっかけが、犯罪だったということが、なんともやるせない事実でもあった。


 「フリーダムランド」は、アメリカ社会の実態を映している。犯罪の起きた場所が黒人の多く住む地域だった場合、警察当局は真っ先に捜査の対象を絞り込み、そこの住民に疑惑のまなざしを向ける。作品では捜査を担当する警察官が黒人という設定になっており、彼の苦悩が浮き彫りにされる。


 しかし僕が深く重い作品といったのは、この問題のことではない。ネタバレにつながりかねないためあまり書くことはできないが、DV(家庭内暴力)、離婚、母子家庭、低所得、ネグレクト(育児・監護放棄)の一連の流れから起こりうる(全体からすれば、起きうる確率は非常に少ないのだが)最悪の結果についてのことを言っている。


 アメリカに限ったことではなく、同様な問題は数は少ないものの日本でも次第に増えてきていることは、報道などを通して感じている。ではどうすれば最悪の結果を未然に防ぐことができるのか。行政?地域社会?人間関係?机上での解答は間違いなくあるのだが、いざ着手となった場合のひとりひとりの問題意識や参加意識を考えれば、一筋縄ではいかない根が深く解決には根気と本気が必要な問題のように思える。