2002年10月25日

 

 映画を観るときの作品選定は各人により異なるのは言うまでもないが、出演している俳優で決める人は多いだろう。

 僕にもお気に入りの俳優が数人いるが、今回は俳優特集の第一弾としてウーピー・ゴールドバーグをとりあげる。

 

・1949年、ニューヨーク市に生まれる。

 本名はCaryn Elaine Johnson。
・1957年、8歳の頃、児童劇団で演技を始める。
・1974年、サンディエゴに移り、レパートリー劇団創立に参加。
・1985年、原作者であるアリス・ウォーカーの推薦により「カラーパープル」に主演し、アカ デミー賞とゴールデングローブ賞の主演女優賞にノミネート。
・1990年「ゴースト」でアカデミー助演女優賞を受賞。

 

 シリアスものからコメディまで幅広い役をこなすネアカ女優で、アカデミー賞受賞式の司会も3度経験している。TVシリーズ「スタートレック」の大ファンでもあるとか。そんな彼女の作品を今回は数本取り上げる。

 

 

「ディープエンド・オブ・オーシャン」

THE DEEP END OF THE OCEAN>(1999)


 母に連れられて同窓会の会場に来ていた3歳の次男ベンが突然姿を消してしまう。捜査の甲斐もなくベンが発見されることのないまま長い月日が流れた。偶然だったが、9年後、ベンが12歳のとき家族はベンと再開し連れ戻すことになる。しかし流れた月日はあまりにも長く、昔の家族に戻ることは容易ではなかった。概要はこんなところだ。
 現在、北朝鮮に拉致された方々は24年ぶりに祖国日本の土を踏むことができた。しかし、北朝鮮には家族を残しての一時帰国であるがゆえ、その心中は複雑であることが容易に想像される。今回の映画のストーリーでも現実に拉致された方々やその家族にとっても、物理的には決して過ぎ去ってしまった時間を取り戻すことはできない。しかし家族である以上、最終的にその長かった時間を、精神的にー徐々にではあるかもしれないがー取り戻していくこととなるであろう。とはいうものの、今後きれいごとでは済まない様々な問題が、現実的に顕在化してくるだろう。双方にとり失われた時間は、逆説的な表現になるが、紛れもなく個々人が生きてきた現実の時間の積み重ねでもある。その時間には各々の人生が描かれているからこそ、余計に問題を難しくすることとなる。ゆっくりと時間をかけて、一歩ずつ先へと進んでいくほかに答えはないだろう。

 

僕のボーガス」<BOGUS> (1996)


 独身キャリアウーマンのハリエットは、亡くなった親友の子供、アルバートを引き取ることになるが、サーカス暮らしをしていたアルバートとなかなか打ち解けることができない。そしてアルバートは空想の親友ボーガスと頻繁に会話をするようになる。そんな彼女と少年とボーガス3人の優しいストーリー。
 ところで、先日童話大賞をとった女性の作品を読んだ。そのお話は、小学校に今ひとつなじめない女の子と、ポケットに入っている小さなヘビとの物語だった。女の子は何かあるとヘビに話を聞いてもらい、ヘビは女の子のいじわるな友達のことをおもしろいあだ名をつけて、女の子の気を紛らわせてくれる。そう、女の子とヘビは最高の親友だった。

 両作品とも、ちょっとした子供の不安な気持ちを、空想上の誰かが埋めてくれるという意味では共通していた。大人から見れば子供が空想上の誰かと話をすることは、現実逃避であり何か精神的に変調をきたしているのではないかと心配する。しかし、程度にもよるが、子供にとっては、それはそれでいいのかもしれない、と僕は思う。見方を変えれば、ある意味でその行為は、子供が苦しいことやつらいことに対して、自らの意志で打破しようとする積極的行為とも考えられる。何も、単なる現実逃避とは限らないかもしれないのである。また、ある時期がくれば大概の子供たちは空想上の親友と別れる時がくる。従ってマイナス的な意味合いである現実逃避と断定できない以上、空想上の友人との会話もいいだろう。ただし、心理学的には、そのような現象が子供に起こるということは、心のどこかに親や友人を含めた人間関係に対する不安や怒り、不満足などの要因も考えられるので、必要以上に過敏な反応はせずにうまく子供と接することも考慮しておかなければならないだろう。
 ちなみに、BOGUS(ボーガス)は、模造の、にせの、という意味である。

 参考:a bogus bill(偽札)

 

「ロング・ウォーク・ホーム」<THE LONG WALK HOME >(1990)


 1955年、アラバマ州の州都モントゴメリーに住む黒人女性が、バスで白人用の椅子に座ったことにより逮捕されてしまう。これを契機に黒人たちはその事件に抗議しようと全米各地でバスに乗る事を拒否。メイドとして白人家庭で働いていた黒人女性オデッサも歩いて通うことになるが、同情した雇用主である主婦のミリアムが自家用車でオデッサを送り迎えする。しかし、彼女の行為は周りの白人たちから反発を受ける。
 この作品は公民権運動を題材に、差別する側と差別される側を描くことで人間の尊厳や醜さを真摯に問いかけたものであった。


 

 

 そのような時代背景の中で僕が生きていたとしたら、果たしてミリアムのような行動を取ることができただろうか。あまり自信がない、というのが率直なところだ。ただし、それでは、自分自身が許せないであろうから、おそらく自己弁護ではあるが、消極的援護―給料を増やすとか、勤務時間を短縮する―をすることで、心の呵責から逃れようとしたに違いない。

 

 実際に起こったバスボイコット運動は、1955年12月1日の木曜日夕方に起きている。
デパートに勤務するパークス夫人42歳は、バスで帰宅の途中だった。後方の黒人用席に座れたが、バスが混んできたため運転手が席を白人に譲るよう命令した。夫人以外の黒人は、白人に席を譲ったが、夫人だけは命令を拒否した。そして運転手は警察を呼び夫人は逮捕されてしまった(この頃の黒人のバス乗車規則は、お金は前のドアからはいって運転手に払った後、またバスの外に出て後ろのドアから入らなければならなかった。また、バスが混み合ってくると、黒人は白人に席を譲らなければならなかった)。
 逮捕後すぐに、人種問題に理解ある数少ない白人弁護士クリフォード・デュア夫妻を同伴した黒人の進歩的民主主義者団を代表するE・D・ニクソンは、夫人保釈のために警察へ行き即日釈放させた。夫人はNAACP(エヌ・ダブルエー・シー・ピー=全国黒人地位向上協会)の要請で裁判を起こした。その裁判の12月5日の当日、黒人に大きな影響力のあるデクスター・アヴェニュー・バプティスト教会によりバスボイコット運動が計画されたが、その計画には大規模な支援が必要とされた。その指導者が後に、
「I have a dream that my four children will one day live in a nation where they will not be judged by the color of their skin but by the content of their character.( 私には夢がある。いつの日にか、私の4人の幼い子供たちが肌の色によってではなく、人となりそのものによって評価される国に住む時が来るという夢を)」という有名な演説を行うことになる、マーティン・ルーサー・キング牧師だった。この運動の結果、キング牧師の名は全米に知れ渡り、公民権運動の指導者になるきっかけとなった。
 

 なお、1956年11月、連邦最高裁が、バスの人種隔離は違憲、という判決を下すまでこの運動は続けられた。後に、ローザ・パークス夫人は 『勇気と希望』の中で、こう語っている。
「私は、自分自身の問題や、自分の思い通りにことが進まないということばかりを考えていると、まったく前進できずにいることに気がつきます。しかし、まわりを見渡し、自分に何ができるかを考え、それを実行したならば、前へ進むことができるのです。」
 内容は取り立てて感銘を受けるほどのものではないが、有言実行した彼女の言葉だからこそとても説得力がある。 平易な表現であるにもかかわらず、何か力強さを感じてしまうのは、やはり行動した人の言葉だからであろう。

 

 今回は、内容がやや重くなってしまったため3作品だけを取り上げた。今後もまた、ウーピー・ゴールドバーグの作品を数回にわたってとりあげたいと思う。

 

出演作品一覧

 

2000 スター・トレック ネメシス(原題)

2001  モンキーボー

2001  ラットレー

2001  ウーピーはMissサンタクロース  
2000  ダナ&ルー リッテンハウス女性クリニック
2000  ディープエンド・オブ・オーシャン

1999  アリス・イン・ワンダーランド 不思議の国のアリス  
1999  17歳のカルテ

1999  レプリコーン 妖精伝説  
1998  キャメロットの騎士 ハイテク科学者中世へ  
1998  ラグラッツ・ムービー  Anime

1998  ステラが恋に落ちて
1998  アラン・スミシー・フィルム
1997  フォーエヴァー・ライフ 旅立ちの朝  
1997  シンデレラ  
1996  T-REX
1996  エディー 勝利の天使

1996  僕のボーガス
1996  チャンス!
1996  ゴースト・オブ・ミシシッピー

1995  ボーイズ・オン・ザ・サイド
1995  ムーンライト&ヴァレンチノ
1995  セルロイド・クローゼット
1995  サンシャイン・ボーイズ すてきな相棒  
1995  ボーデロ・オブ・ブラッド 血まみれの売春宿
1994  コリーナ、コリーナ
1994  ジェネレーションズ STAR TREK
1994  ライオン・キング  Anime

1994  ちびっこギャング

1993  天使にラブ・ソングを2
1993  メイド・イン・アメリカ
1993  ローデッド・ウェポン1
1992  ザ・プレイヤー
1992  サラフィナ!
1992  天使にラブ・ソングを…
1992  ジェネレーション タイムスリップ・エイリアン
1991  ソープディッシュ
1991  ハリウッド・ナイトメア④  
1991  ハウス・パーティ パジャマでシェイクヒップ!
1991  ジェネレーション クリンゴン帝国の危機
1990  ゴースト ニューヨークの幻
1990  ロング・ウォーク・ホーム
1989  天使のキス・ショット  

1989  天使が降りたホームタウン
1988  ウーピー・ゴールドバーグの ザ・テレフォン
1988  ビバリーヒルズ・ブラッツ
1988  マイフレンド,クララ
1987-1994  新スター・トレック (1987~1994)
1987  危険な天使
1987  バーグラー 危機一髪
1986  ジャンピン・ジャック・フラッシュ
1985  カラーパープ