2002年9月22日

 タイ・バンコクから帰国して初のコラムになる。今回は作品のタイトルについてランダムに書いてみたい。今後タイトルについてのコラムは不定期のシリーズとして載せていく。
 最近のアメリカ映画のタイトルは、英語をそのままカタカナに直したものが多く、よく意味がわからないものもある。また逆に、うまい邦訳をつけており原題がわからない場合もある。そこで、映画のタイトルに視点をおいたショートコラムをスターとさせることにする。なお、取り上げるのはアメリカ映画のみで、新旧作品をランダムに取り上げていく。

 題して、「映画タイトルあれやこれ」

 

コラテラル・ダメージ
原題:COLLATERAL DAMAGE 制作年:2001年


 COLLATERAL DAMAGEを辞書で引くと、戦闘での民間人殺傷、とある。作品内容は、爆破テロに巻き込まれ命を落としてしまった妻と子供のために、主人公が単身敵に立ち向かうというものだ。なぜ単身で戦うのか?それは国家的利益のために犯人を捕まえようとしない政府の姿がそこにあったからだ。つまり政府には国家の目的のために多少の犠牲(コラテラル・ダメージ)はやむを得ないとの考えがあったからに他ならない。

 

キャスト・アウェイ
原題:CAST・AWAY 制作年:2000年


 CAST・AWAYを辞書で引くと、漂流者、世間から見捨てられた人等とある。作品内容は、飛行機事故で無人島に取り残された男の生還への孤独な戦いの姿を描いている。子供時代、十五少年漂流記(ジュール・ベルヌ作)に描かれていた無人島での生活にわくわくしたものだが、大人になった今では、映画のような状況下での生活は決してしたいとは思わない。しかし、である。ログハウスがあり、食料、ビールを含む飲料水、ライターや釣道具、虫除けスプレーなどが揃えられていて、しかも1ヶ月の期間限定のクーラー付だったらやってもいいんだけど・・・

海辺の家
原題:LIFE AS A HOUSE 制作年:2001年


 自分の命があと4ヵ月と知った建築デザイナーの男性は、それまでの自分勝手だった人生を見つめ直し、海辺にある自分の家を建て直すことで信頼関係を失っていた息子との絆を取り戻そうとする、というのが作品内容だ。古い家を建て直すことで、それまでの人生(LIFE)を新しく立て直すという意味が込められた原題に、どちらかといえば静的な印象を与える「海辺」という邦訳をあてたことは、迫りくる「死」のもつイメージである「静」をうまく絡めたタイトルだといえる。

電話で抱きしめて
原題:HANGING UP 制作年:2000年


 3姉妹の真中にいる主人公は、老人性痴呆症の父の面倒を忙しく看ている。頻繁に携帯電話にかかってくる入院中の父からの電話や仕事のトラブルの電話で彼女はパンク寸前だ。壊れそうで壊れない3姉妹の絆、そして父への愛情を温かい視点で綴る、というのが作品内容だ。HANGUPには、電話を切る、悩みの種などの意味がある。娘に大した用もないのに病院から電話をかけてくる父に、イライラしながらも逐一対応する主人公。電話を通しての父への愛情が、電話で抱きしめて、という大仰でないさりげなく気の利いた邦題になっている。

カッコーの巣の上で
原題:ONE FLEW OVER THE CUCKOO'S NEST

制作年:1975年


 精神病院に偽装入院した主人公が、人間の尊厳とは何かを問いかける作品だ。原題のCUCKOOは、頭がいかれた人の隠語だ。原題のNESTはいうまでもなく病院のことになる。隠語のことを知らないと、カッコーが出てくる鳥に関する物語と思ってしまうかもしれない。ちなみに、この作品は僕が今まで観た3000本を超える作品の中でベスト1に挙げた作品である。

アウトブレイク
原題:OUTBREAK 制作年:1995年


 未知の伝染病が拡大しないように厳戒防護措置が取られたが、それでもある地方都市に侵入してしまう。街は完全に隔離され、米陸軍伝染病研究所はウィルスの謎を懸命に解き明かそうとする、という作品だ。原題のOUTBREAKには突発、発生等の意味がある。この作品の元になるウイルスはエボラ出血熱(ラッサ熱、マールブルグ病、クリミア・コンゴ出血熱と共にウイルス性出血熱の一疾患)で、コートジボワールを除けばアフリカの中央部でのみ発生している。特徴は血液や体液によりヒトからヒトへ感染が拡大し、多数の死者を出すことである。なお、恐ろしいことに現在も自然界の宿主は不明である。

E.T.
原題:E.T.THEEXTRA-TERRESTRIAL 制作年:1982年


「EXTRA・TERRESTRIAL」とは、地球外生物のこと。つまり宇宙人だ。

 子供の頃、僕にとって宇宙人といえば、ETとは似ても似つかないタコのような形をした火星人のことだった。しかし現在では、タコのような宇宙人を想像する子供は皆無に近いだろう。     2001年4月、太陽系外惑星が新たに11個発見された。このうち1つの惑星は、地球にとてもよく似た軌道条件を持っているらしく、生命の存在に適した環境を持つ可能性があるようだ。しかし、この惑星は木星の3.5倍以上の質量を持つガス惑星で、この惑星そのものには生命が存在する可能性は少ないのだが、もしこの惑星に衛星があればそこに生命が存在する可能性は十分あるという。だとしたら、いったいどんな宇宙人がいるんだろうか?人間に近いのか?ETに近いのか?それともタコ?