2006.02.12

 

今年早々と◎の作品に出会った。邦題タイトルを見たときから是非観ようと思っていた作品だったが、◎をつけることができるとは思っていなかった。その作品は、「きみに読む物語」(THE NOTEBOOK)<2004/アメリカ 監督:ニック・カサヴェテス 主演:ライアン・ゴズリング/レイチェル・マクアダムス)だ。

 

初老の男性、デュークは、療養施設で暮らしている認知症の初老の女性に、ある物語を毎日読み聞かせている。認知症の女性は、彼の話を楽しみにしている。読み聞かせの物語は、1940年のノース・カロライナ州シーブルックを舞台にしたひと夏の恋物語だった。裕福な家族とひと夏を過ごしにやって来た少女は、地元の青年と出会い二人は恋に落ちるのだが、両親の反対にあい離れ離れになってしまう。そして、二人とも別々の人生を歩み始めいつしか時間だけが過ぎていく。しかし、あることをきっかけに、二人は再開することになり、そして・・・・、というものだった。

 

映像のなせる技、それが映画の素晴らしいところであることはいうまでもない。デュークが読み聞かせている現在の場面から、突然画面が変わり若い二人の夏の恋物語が続く。その行方は、という、まさに佳境にはいるところで、また画面は初老の二人のシーンに戻る。現代と過去、そして静と動の逸話が小気味よく入れ替わりながら、作品は自然な流れのまま続いていく。そして、あるタイミングで、観客はハッと真実を知り胸が熱くなる。その胸の熱さが冷めることなくラストシーンへと展開し、切ない気持ちになるのだが、同時に優しい気持ちにもなり、思いやることや愛することの尊さをかみ締めることとなる。ネタばらしをするつもりがないのでこんな漠然とした記載になってしまうのだが、心に残る素晴らしい作品だった。

 

 ここからは、イーローゴ・ネットから認知症についいての内容を抜粋させてもらう。

日本では、2020年代になると65歳以上の老人人口が全人口の20%に達するといわれている。現在、65歳以上の認知症老人は約190万人。2020年代には300万人を超え、65歳以上の人の約10%に達すると予測される。認知症老人は年齢とともに増加し80歳以上になると45人に1人が認知症に陥るともいわれている。

認知症の症状は中心となる症状と、それに伴って起こる周辺の症状に分けられる。中心となる症状とは「記憶障害」や「判断力の低下」で、必ずみられる症状だ。周辺の症状は人によって差があるが、下記のような症状がある。

■妄想

しまい忘れたり、置き忘れたりした財布や通帳を誰かが盗んだ、自分に嫌がらせをするために隠したという「もの盗られ妄想」の形をとることが多い。このような妄想は、最も身近な家族が対象になることが多い。この他に「嫁がごはんに毒を入れている」という被害妄想や、「主人の所に女が来ている」といった嫉妬妄想などということもある。

■幻覚

認知症では幻聴よりも幻視が多い。「ほら、そこに子供たちが来ているじゃないか。」「今、男の人たちが何人か入ってきたのよ」などといったことがしばしば見られることがある。

■不安

自分がアルツハイマー病であるという完全な病識を持つことはないが、今までできたことができなくなる、今までよりもの忘れがひどくなってきているという病感があることは珍しくなく、不安や焦燥などの症状が出現。また、不安や焦燥に対して防衛的な反応として妄想がみられることもある。

■依存

不安や焦燥のために、逆に依存的な傾向が強まることがある。一時間でも一人になると落ち着かなくなり、常に家族の後ろをついて回るといった行動があらわれることがある。

■徘徊

認知症の初期には、新たに通い始めた所への道順を覚えられない程度だが、認知症の進行に伴い、自分の家への道など熟知しているはずの場所で迷い、行方不明になったりする。重症になると、全く無目的であったり、常同的な歩行としか思えない徘徊が多くなる。アルツハイマー病に多く、脳血管障害による認知症では多くない。

■攻撃的行動

特に、行動を注意・制止する時や、着衣や入浴の介助の際におきやすい。型にはめようとすることで不満が爆発するということが少なくない。また、幻覚や妄想から二次的に生じる場合もある。

■睡眠障害

認知症の進行とともに、夜間の不眠、日中のうたた寝が増加する傾向にある。

■介護への抵抗

理由はわからないが、認知症の高齢者の多くは入浴を嫌がるようになる。「明日はいる」「風邪をひいている」などと口実をつけ、介護に抵抗したり、衣服の着脱が苦手であること、浴室の床でころぶかもしれないことなど、運動機能や条件反射が鈍くなっているための不安、水への潜在的な恐怖感などから生じると考えられる。

■異食・過食

食事をしても「お腹がすいた」と訴える過食がみられたり、食べられないものを口に入れる、異食がみられることがある。口に入れるのは、ティッシュペーパー、石けん、アイスノンの中身までさまざま。

■抑うつ状態

意欲の低下(何もしたくなくなる)や、思考の障害(思考が遅くなる)といった、うつ病と似た症状があらわれることがある。うつ病では、気分や感情の障害(悲しさや寂しさ、自責感といったもの)を訴えることがあるが、認知症では訴えることは少ない。

 

 

「きみに読む物語」での初老の女性の症状には、周辺症状の描写はなく、あくまでも中心症状である記憶障害が描かれていた。介護で一番大変なのは、おそらく周辺症状を発症したときだろう。そのような意味では、この作品は認知症という病を100%伝えていない。しかし、この作品のテーマは、人を愛すること、人に愛されることが、科学では説明できない不思議な現象をひきおこすこと、つまり愛情に勝るものはない、ということにおいているので、周辺症状の無描写への言及は無粋であろう。