2015.07.22

ヒラリースワンク ライフ」<MARY AND MARTHA

 

2013/イギリス・アメリカ

監督:フィリップ・ノイス

主演:ヒラリー・スワンク/ブレンダ・ブレシン

 

<概要amazon

インテリアデザイナーのマリーは一人息子のジョージがいじめにあっているのを知り、環境を変えようと母子二人の長期旅行を計画。行き先はアフリカ。自然が息子の心を癒してくれると信じアフリカに渡る。

一方、マーサは孤児院の教師になるためモザンビークに旅立つ息子ベンを見送る老年の母。快活な好青年ベンはすぐにアフリカの子どもたちに溶け込み、またジョージにも新しい友達が増え笑顔が戻る。

――しかし、ある日突然2人の息子たちをマラリアが襲う。息子を亡くし、打ちひしがれる母2人。

悲しみの中、偶然の出逢いを果たした彼女たちは、多くの子供たちがこの感染病によって命を奪われていく現実を食い止めるべく支援を求め、国を動かす活動を始める。果たして母2人の言葉は、悲しみは世界に響くのか・・・?

 

この作品で興味を惹かれたのは次のシーン。

マリーは、マラリアの感染予防の国家予算を増額してもらうために奔走しているが、なかなかそれは難しいことだった。そこで、ある事情から疎遠にしていた政界に顔の利く父に相談を持ちかける。しかし、父を嫌っているマリーは、父の反応の鈍さに憤慨し帰ろうとする。その際に父がマリーを止めて言う。

「興味深い。調べてみた。知ってたか。この20年間でテロにより殺された人の数に、1967年の6日戦争以降、中東で死んだ人の数を足す。さらにベトナム戦争と朝鮮戦争での犠牲者とイラクやアフガニスタン介入の犠牲者の数を加える。全部合計して2倍にする。毎年マラリアでなくなる子供の数と同じだ」


さほどある事柄に対し関心をもっていない人々に興味を持ってもらう際、効果的な説明や説得をするために僕たちは数値を使うことがある。しかし、数値だけを披露しても関心をひくことができない場合がある。そのようなケースは想定内のことであるため、だからこそ説明には一ひねりが必要だ。

マラリアについての説得材料のひとつが上記の台詞だった。

このような言い回しをすることで、いかに多くの子供がマラリアで亡くなっているかが直感的に伝わる実にうまい表現だった。

 

作品としては内容が内容だけに感動的ではあるのだが、マリーの何でも一人で決めて事を推し進める自由奔放で強引な性格描写が気になった。もう少しトーンを落としたキャラクター設定でもよかったような気がする。一方、予算委員会でのマーサが控えめに、しかし信念を持って発言するシーンには、心打たれるものがあった。スーパーヒーローでない、どこにでもいそうな普通のおばさんが懸命に訴える姿がそこにあったからだ。

 

厚生労働省検疫所のホームページによると、201312月に公表された統計では、世界では1年間に約2700万人がマラリアに感染し、推計627000人が死亡しており、死亡者のほとんどはアフリカに住む子どもで、アフリカでは1分に1人の子どもがマラリアで死亡している。

症状としては、1週間から4週間ほどの潜伏期間をおいて、発熱、寒気、頭痛、嘔吐、関節痛、筋肉痛などがでる。マラリアの種類は4種類(熱帯熱マラリア、三日熱マラリア、四日熱マラリア、卵形マラリア)あり、その中でも、熱帯熱マラリアは発症から24時間以内に治療しないと重症化し、しばしば死に至り、脳症、腎症、肺水腫、出血傾向、重症貧血など、さまざまな合併症がみられる、ということだ。