2015.9.10
「きっと、うまくいく」<3 IDIOTS>
2009/インド
監督:ラージクマール・ヒラニ
主演:アーミル・カーン/R・マドハヴァン
シャルマン・ジョシ/カリーナ・カプール
2010年インドアカデミー賞史上最多16部門受賞
インド歴代興行収入ナンバーワン
全世界興収75億円
世界でリメイク決定
<概要 公式サイト>
【舞台は日の出の勢いで躍進するインドの未来を担うエリート軍団を輩出する、超難関理系大学ICE。未来のエンジニアを目指す若き天才が競い合うキャンパスで、型破りな自由人のランチョー、機械よりも動物が大好きなファラン、なんでも神頼みの苦学生ラージューの“三バカトリオ”が、鬼学長を激怒させるハチャメチャ珍騒動を巻き起こす。彼らの合言葉は、「きっと、うまくいく!!」
抱腹絶倒の学園コメディに見せかけつつ、行方不明になったランチョーを探すミステリー仕立ての“10年後”が同時進行。
その根底に流れているのは、学歴競争が加熱するインドの教育問題に一石を投じて、真に“今を生きる”ことの素晴らしさを問いかける万国普遍のテーマなのだ。】
文句なく◎のスプレンディッドな作品。
170分という3時間近い作品でありながら、あっという間にエンディング。それほど展開が早く、まったく観客を飽きさせない物語がスクリーンに踊っていた。
楽しい踊りがあり、謎解きがあり、危機一髪があり、社会性にも富んでいる。それらを根幹から支えているのが、笑いや喜びや悲しみ、恋心や勇気など、映画には欠かせない人間の感情を揺さぶるような脚本に他ならない。
それもそのはずだ。インド新聞から引用する。
【インド映画は「マサラムービー」とも呼ばれている。<マサラ>とはミックススパイスのこと。愛あり、涙あり、笑いあり、サスペンス、ヴァイオレンスあり。あらゆる娯楽要素を入れるのがお約束。”ナヴァ・ラサ”(9つの情感)と呼ばれる、色気(ラブロマンス)・笑い(コメディー)・哀れ(涙)・勇猛さ(アクション)・恐怖(スリル)・驚き(サスペンス)・憎悪(敵の存在)・怒り(復讐)・平安(ハッピーエンド)を1本の映画に放り込み、歌&踊りを随所に織り込んで出来上がったエンターテインメントフィルム、それが<マサラムービー>】
このようにこの作品には、9つの感情がごく自然に、しかも、完璧なまでに織り込まれている。楽しめたのは当然だ。
作品の構図としては、無機質で成果のみを求める悪玉の学長と、仲間には一切苦労話をせず、「Aal izz Well」と自分を鼓舞している努力家で人間味あふれる善玉の主人公との対立を軸に、さまざまな喜怒哀楽のエピソードが添えられている。
僕が◎をつける作品には社会派作品が多いのだが、この作品もインドが抱えている問題を扱っている。
超難関大学に入るためには多額のお金がかかる。しかし、入学者全員が裕福な家庭の出身ではない。そこには、貧富の差が歴然と出てしまうカースト制度が存在している。この作品でもこの事実が描かれている。
また、経済発展著しい競争・学歴社会のインドの一面を、学長を通し「2番では意味がない」とも表現させている。
このようなインドの厳しい背景を幹にしているからこそ、主人公たちの喜怒哀楽、奮闘がより際だって見えたのだろう。
とてもわかりやすい流れに主人公たちの魅力が相まって、観た後に、とても幸せでほっこりした気持ちになれる最高の作品だった。