2016.03.08

 

「レイルウェイ 運命の旅路」

The Railway Man

  

2008

オーストラリア・イギリス

  

監督

ジョナサン・テプリツキー

  

主演

コリン・ファース/ニコール・キッドマン

 

 

  

1995年度「エスクァイア」誌にてノンフィクション大賞を受賞した元英国兵捕虜の一人、エリック・ローマクスの自叙伝「The Railway Man」の映画化だ。 

現在と過去が交互に綴られ、なぜ主人公が現在の境遇にいるのかが次第にわかってくる。

戦時下の過酷な体験が綴られた、実に重い作品であり、人間の本質を突いている作品でもあった。

  

この作品の背景には1942年に開始された鉄道建設があった。

当時日本軍は補給路確保のため、タイとビルマを結ぶ泰緬鉄道、別名、「死の鉄道」建設に乗り出していた。その際、日本の捕虜となった連合軍兵士も建設に動員され、結果として戦争捕虜のうち6,648人の英国人と2,710人のオーストラリア人が命を落としている。

 

<概要 amazon

「鉄道好きな初老の男性エリック・ローマクスは列車で美しい女性パトリシアと相席となり、一目で恋をする。彼女の方もまた、エリックに心惹かれる。間もなく2人の愛は深まり結婚式を挙げる。しかし幸せな日々は長くは続かなかった。

エリックは若い頃に第二次世界大戦に従軍していた際の、過酷な戦争体験で負った心の傷に苛まれていたのだ。そんな夫をパトリシアは何とか救いたいという一心で、エリックの退役軍人会の仲間フィンレイを訪ねて救いを求める。だが、フィンレイもまた戦争のトラウマから立ち直っておらず、同じ苦しみを抱えていた。

そんな中、彼らの悪夢のような体験に深く関わる、日本人通訳だった永瀬が、今も生きていることを新聞記事により知る。癒えぬ傷を抱えたまま30年が経ち、ある日戦友のフィンレイから当時自分を拷問した日本兵が生きていることを知らされたローマクスは再び単身タイに渡り、その男と対面を果たす」

 

戦後、二人とも戦争のトラウマから抜け出せずに苦しんでいた。

永瀬は通訳として捕虜虐待の現場にいた。そしてエリックは永瀬の見ている前で拷問を受けた。この同時間軸に居合わせた二人の心に残ったものは、永瀬の場合は呵責と後悔。エリックの場合は怒りと復讐心だった。

エリックは憎しみを抱きながら、タイで慰霊のためのガイドをしている永瀬と対面し、その怒りと憎しみを吐き出すかのように暴力的態度で永瀬に迫った。

永瀬は死ぬことを覚悟する。しかし、エリックは永瀬もまた自分と同じように苦しんでいたことを知る。

後日、妻のパトリシアを伴い永瀬に再度会いに行く。すでにその時は、復讐心に燃えた大きな炎は小さくなっていた。永瀬を許すことであのトラウマから解放されることをエリックは悟っていた。

 

通訳として拷問の手助けをした永瀬とエリックとの対面で死を覚悟した永瀬。

永瀬との対面で復讐を遂げようとしたエリックと永瀬を許したエリック。

時間軸の変化が二人を変えた。

 

ラストシーンでそれぞれが口にした言葉は実に崇高であったし、また、それが人間の本質であると信じたい。