2017.07.01
「あの日の声を探して」<THE SEARCH>
2014/フランス・グルジア
監督:ミシェル・アザナヴィシウス
主演:ベレニス・ベジョ
アネット・ベニング
<概要 amazon>
1999年、チェチェンに暮らす9歳のハジは、両親を銃殺されたショックで声を失ってしまう。姉も殺されたと思い、まだ赤ん坊の弟を見知らぬ人の家の前に捨て、一人放浪するハジ。彼のような子供さえもロシア軍は容赦なく攻撃していた。だが、そんなロシア兵たちも初めは普通の青年だった。音楽と自由を謳歌していたコーリャも、異常な訓練で人の心を失っていく。
戦火を逃れ街へたどり着いたハジは、EUに勤めるフランス人のキャロルに拾われる。自分の手では何も変えられないと知ったキャロルは、せめて目の前の小さな命を守りたいと願い始める。ハジは声を取り戻し、生き別れた姉弟と再び会うことができるのか――?
主人公ハジのキャスティングでもうこの作品の〇評価が決まった。それは、悲しげな表情・はにかむ表情・はちきれる笑顔、のそれぞれの表情に魅せられたからだった。
また、戦地に長く従軍するうちにロシア軍の青年が次第に人間性を失っていく過程もよく描かれていた。一般人から狂気にかられた軍人への様変わりは今さながら恐ろしい。戦争が持つ大きな副作用の一つだ。
それぞれの主人公が最後の登場シーンで画面に残した顔は、同じ笑顔でもまったく相異なるものだった。一度は絶望し悲しみと苦しみの最中にいたハジが姉を見つけた時のくったくのない幸せに満ち溢れた笑顔と、ロシア軍人の青年が戦地で敵を見つけた時の狂気に満ちた人間性の欠如した笑顔。
戦争は同時に被害者と加害者という2種類の人間を生み出してしまう。被害者が見せる笑顔が心からのものでないことは明らかで、悲しみの中から絞り出された悲しい笑顔と言える。加害者の笑顔は狂気からくるもので、言葉を換えれば精神崩壊笑顔ともいえるだろう。
こんなことを考えさせられた作品だった。