2019.03 09

 20193月になるまでコラムの更新ができなかった。こんなに長く更新できなかったことは初めてだ。例年に比べ鑑賞ペースは落ちているが、今後は元に戻っていくだろう。タイトルに惹かれ観た作品がこれだった。

 人生はシネマティック 

THEIR FINEST 

 

2016/イギリス

監督:ロネ・シェルフィグ

主演:ジェマ・アータートン

        サム・クラフリン

  

<概要 公式サイト>

1940年、第二次世界大戦下のロンドン。ドイツ軍からの空爆が日毎に激しさを増す中、イギリス政府は国民の不安を取りのぞいて戦意を高揚させるための宣伝映画(=プロパガンダ映画)を製作していた。そして、ひとりの女性に白羽の矢が立った!これまで一度も執筆経験のないコピーライターの秘書が、新作の脚本を書くことになったのだ! それは、フランスのダンケルクでドイツ軍の包囲から英軍兵士を救出した、双子の姉妹の物語。この感動秘話を共同で脚本化に挑む彼女だったが、いざ製作が始まると、政府の検閲や軍部の横やり、ベテラン俳優のわがままやセリフ棒読みのド素人の出現により、脚本が二転三転するトラブルが続出! それでも戦争で疲弊した国民を勇気づけるため、無茶な要求にも負けず、彼女は必死にベストを尽くす。そんな姿に出演者やスタッフは共感し、現場の結束力は高まっていく。しかし、映画が完成間近になった時、予想もつかない最悪の事態が待ち受けていた――。

 

 主演女優のジェマ・アータートンのキャスティングがあったからこそできた秀作だろう。品では、彼女のキャラクターは控えめで品行方正な女性であり、あくまでも能力をひけらかさず男性のサポートにまわるような女性だ。しかし同時に、芯は強く自分の考え方をしっかり持っている。一旦双子の姉妹の物語の脚本を手掛けるとなると、同一人物とは思えないほど積極的なキャラクターに変わり、次々とアイデアを出し制作現場をリードしていく。

 

 作品は脚本家として能力を開花していく彼女が描かれるが、同時進行で男性との緩急を交え た恋愛の機微が作品半ばからテンポよく描かれる。その過程は観客をやきもきさせる。まさに監督の狙い通りに僕はやきもきした。そしてこの伏線が巧みな分だけ僕は思いもよらないシーンの登場に愕然とした。

作品のほぼ最後、脚本家としての自分の力量を彼女自身が感じ確信し、また新しい脚本に取り組む決心をする。決心させたのは、一般観客に交じり作品を鑑賞した時だった。それは観客の生の反応であり生の声だった。劇場は笑いと涙で包まれていた。彼女の作品にかけてきた情熱と独特の感性、そして考察力の類まれなる才能が証明された瞬間だった。

 

 

 

 この作品のように男性主体社会で女性が活躍するという似たようなエッセンスを持ち合わせた2018年にアメリカで制作された作品に「ビリーブ 未来への大逆転」<ON THE BASISI OF SEX>があった。バンコクの劇場で観たのだが印象に残る作品だった。僕好みの史実の映画化だったこともあるが、今回紹介した作品同様、主人公の女性の演技に惹かれたというのが大きな理由だ。次回この作品のコメントを掲載する。

<概要 公式サイト> 

時は1970年代、アメリカ。女性が職に就くのが難しく、自分の名前でクレジットカードさえ作れなかった時代に、弁護士ルース・ギンズバーグが勝利した、史上初の〈男女平等〉裁判。なぜ、彼女は法の専門家たちに〈100%負ける〉と断言された上訴に踏み切ったのか?そして、どうやって〈大逆転〉を成し遂げたのか? 

貧しいユダヤ人家庭に生まれたルース・ギンズバーグは、「すべてに疑問を持て」という亡き母の言葉を胸に努力を重ね、名門ハーバード法科大学院に入学する。1956年当時、500人の生徒のうち女性は9人で、女子トイレすらなかった。家事も育児も分担する夫のマーティの協力のもと首席で卒業するが、女だからというだけで雇ってくれる法律事務所はなかった。やむなく大学教授になったルースは、70年代になってさらに男女平等の講義に力を入れる。それでも弁護士の夢を捨てられないルースに、マーティがある訴訟の記録を見せる。ルースはその訴訟が、歴史を変える裁判になることを信じ、自ら弁護を買って出るのだが──。