2019.05.05
「人生はシネマティック」の作品のように男性主体社会で女性が活躍するという似たようなエッセンスを持ち合わせた作品に「ビリーブ 未来への大逆転」がある。
バンコクの劇場で観たのだが印象に残る作品だった。僕好みの史実の映画化だったこともあるが、主人公の女性に惹かれたというのが大きな理由だ。
「ビリーブ 未来への大逆転」
<ON THEBASIS OF SEX>
2018・アメリカ
監督:ミミ・レダー
主演:フェリシティ・ジョーンズ
アーミー・ハマー
<概要 公式サイト>
時は1970年代、アメリカ。女性が職に就くのが難しく、自分の名前でクレジットカードさえ作れなかった時代に、弁護士ルース・ギンズバーグが勝利した、史上初の〈男女平等〉裁判。なぜ、彼女は法の専門家たちに〈100%負ける〉と断言された上訴に踏み切ったのか?そして、どうやって〈大逆転〉を成し遂げたのか?
貧しいユダヤ人家庭に生まれたルース・ギンズバーグは、「すべてに疑問を持て」という亡き母の言葉を胸に努力を重ね、名門ハーバード法科大学院に入学する。1956年当時、500人の生徒のうち女性は9人で、女子トイレすらなかった。家事も育児も分担する夫のマーティの協力のもと首席で卒業するが、女だからというだけで雇ってくれる法律事務所はなかった。やむなく大学教授になったルースは、70年代になってさらに男女平等の講義に力を入れる。それでも弁護士の夢を捨てられないルースに、マーティがある訴訟の記録を見せる。ルースはその訴訟が、歴史を変える裁判になることを信じ、自ら弁護を買って出るのだが──。
ハーバード法科大学院を首席で卒業したルースは、愛らしく可愛らしい女性だが、大学の授業で男性生徒が展開した考え方とは違う視点で論を展開し、その男性生徒をやり込める。それが教授の目に止まり以降の彼女の人生に大きな影響を与えることになる。
僕が彼女に惹かれたのは愛嬌やユーモアがあり、かつ可愛らしいから、というだけではない。それは、彼女の揺るぎない決意と想いに基づいた力強い行動力にほかならない。法科大学院を卒業し法律事務所に勤務したかったルイスだったが、当時のアメリカ社会では女性というだけで門前払い、あるいは体よく断られる。
男女平等社会の実現を諦めることのできないルイスは、教授として法律に関わり続ける。その諦めるこのない強い意志は、彼女自らの体験や想いからきている。この揺るぎない動機こそが、事を成り立たせる大きな要因となる。
しかし彼女の想い実現までには幾多の壁が立ちはだかる。数年が経ち、さらに数年、そしてさらに数年と事がうまく運ばないにも関わらず彼女が行動し続けることができたのは、経験からきた真の想いの強さにある。行動に継続性を保たせることが容易でないことを僕らは知っている。そのハードルを越えて彼女はついに男女平等の基本法を成立させる。
彼女の想いの本気度とバイタリティ溢れる行動力が彼女に勝利を運んできた。多くの示唆を与えてくれる秀逸な作品だった。