2019.10.26

 前回のコラムに続きバンコクの劇場で観た作品をコメントする。

 

ジョーカー」<JOKER 

 

2019/アメリカ 

監督:トッド・フィリップス 

主演:ホアキン・フェニックス/ロバート・デ・ニーロ 

 

 コメディアンを夢見ているものの世の中そうはうまくいかない。母の面倒を見るために仕方なくピエロの大道芸人で細々と収入を得ているアーサー。そんなある日、電車内で酔った男たちに絡まれ暴行を受けた彼は躊躇なく彼らを射殺する。その瞬間、彼の中で何かが弾けた。彼に取り爽快感を伴う殺人はエスカレートしていき、エクスタシーは頂点に向かい駆け足で登っていく。

 

愛情を持ち母を世話するアーサー。同じアパートに住む一人の女性を愛するアーサー。一方で躊躇なく殺人を犯していくアーサー。アーサーの中には別人格の人間二人が住んでいる。

 

この作品の中でアーサーの狂気が見事に表現されているのは、不気味であり虚無的でもある無理な高笑い、そして、発砲シーン。

まだ上映中でもあるため詳しくは書かないが、人間を人間とも思わない彼の冷えた、そして絶望し壊れ崩れてしまった心の内を、突然、公に披露する場面が幾度となくある。

鑑賞後もあの高笑いが頭の中で響く。躊躇なしの即座の発砲も狂気の深さと彼の心の闇を映し出していた。

 

ホアキン・フェニックスは来年のアカデミー主演男優賞をとるに違いない。また社会性の強いテーマでもあるため作品賞とのダブル授賞も十分あり得るだろう。