2020.12.06
「15ミニッツ・ウォー」
<15 MINUTES OF WAR>
2018/フランス・ベルギー
監督:フレッド・グリヴォワ
主演:オルガ・キュリレンコ
<ジブチ共和国バスジャック事件>
1976年2月3日にアフリカ・ジブチ共和国のフランス空軍基地を出発した軍用バスが、過激派組織FLCS(ソマリア沿岸解放戦線)から襲撃を受け、乗車していたフランス軍人の子供ら31人が人質となり、バスの運転手はソマリアとの国境に位置するロワイヤダ村へ向かうように指示された。フランス政府は事態に対処するため、フランス外人部隊と1974年に発足して間もないフランス国家憲兵隊の特殊部隊:GIGN(Groupe d’intervention de la gendarmerie nationale)を現地へ派遣した。この事件がGIGNにとってフランス国外での初任務であった。
実話の映画化のため結末を知っての鑑賞となるが、そのことは作品評価にまったくマイナスにならなかった。作品と史実に一部異なるところがあるようだが、事件の背景や結末を史実として把握し鑑賞することは、むしろ作品への理解を深めることに役に立つ。
実際の狙撃手は9人編成で、そのうち狙撃手は8人だったが作品では5人。また、作品では犯人は4人だが実際は6人。さらに、女性教師が子供たちを安心させるために途中からバスに乗り込み、最後まで子供たちを守る描写となっているが、実際、このようなことは起きていない。
作品での狙撃手5人の使命は、30人の子供たちと1人の運転手、1人の教師を救うために、4人の犯人をスコープ越しに捉え確実に射殺することだった。
狙撃開始から終結までわずか15分。結果はソマリア国境側から予想外のソマリア軍による狙撃手たちへの攻撃が原因で1人の子供が犠牲となった。
大規模なソマリア軍の銃撃を受けながら1人の犠牲者で済んだとういうのが、政府の見解だが、画面には5人の狙撃手たちの落胆したそれぞれの表情が映し出される。彼らにとって、この作戦は明らかに失敗だった。なんともやりきれない結末だった。
GIGNについてウキペディアから抜粋しておく。
・人材
隊員は全員が志願制で、国家憲兵隊で5年以上の勤務実績があり、かつ勤務実績が優等であったもののみが対象となる。選抜課程は極めて過酷であり、このように厳格な条件をクリアした隊員ですら、合格率は平均7パーセント程度に留まっている。選抜課程を合格した隊員は、10ヶ月の訓練課程を経て部隊に配属される。
GIGNは射撃術に力を入れていることで知られており、射撃訓練課程は他国からの受講生も多い[1]。GIGN隊員は1日300発もの銃弾を費やして射撃訓練を行い、スキルを保っている[1]。全員が狙撃訓練を受け、高い精密射撃能力を備えることから、専任の狙撃手が指定されていないのも特徴である。またほとんどの隊員が山岳行動や戦闘潜水の資格も得ている。
・活動史
GIGNは創設当初より頻繁に活動しており、1974年から1985年までに650回以上出動し、500名以上の人質を救出、1,000名以上の犯罪者・テロリストを拘束した。一方、この期間に、5名の隊員が訓練中に殉職している。上記の通り、国家憲兵隊のほうが国家警察よりも広い地域を管轄していることもあり、GIGNの出動回数は、国家警察の同種部隊である特別介入部隊(RAID)の3倍に及ぶとされている。
またフランス軍の一部として、軍事的な作戦を実施する場合や海外での作戦行動に備えて、第1海兵歩兵落下傘連隊や第2外人落下傘連隊との連携も重視されている。
・参加したとされる主な任務、作戦
1976年 ジブチ共和国バスハイジャック事件
1978年 クレーボー刑務所事件
1992年 コモロ紛争
1994年 エールフランス8969便ハイジャック事件
2001年 アフガニスタン紛争(不朽の自由作戦)
2015年 ダマルタン=アン=ゴエルでの印刷工場籠城事件