2021.09.04
「家へ帰ろう」
<EL ULTIMO TRAJE>
2017/スペイン・アルゼンチン
監督:パブロ・ソラルス
主演:ミゲル・アンヘル・ソラ
<概要 amazon>
アルゼンチンに住む88歳の仕立屋アブラハムは、施設に入れようとしている家族から逃れ、ポーランドへ向かうための旅に出る。目的は、70年前にホロコーストから命を救ってくれた親友に自分が仕立てた「最後のスーツ」を渡すこと。飛行機で隣り合わせた青年、マドリッドのホテルの女主人。パリからドイツを通らずポーランドへ列車で訪れることができないか、と四苦八苦するアブラハムを助けるドイツ人の文化人類学者など、旅の途中で出会う人たちは、アブラハムの力になろうと自然体で受け入れ、手助けする。たどり着いた場所は70年前と同じ佇まいをしていた。アブラハムは親友と再会できるのか、人生最後の旅に“奇跡"は訪れるのか…。
テーマ自体がホロコーストを扱っているため、きちんと背を伸ばし佇まいを正して鑑賞に臨んだ。
冒頭はどこにでもありそうな風景だった。
親を施設に入れようと説得を試みる子供たち、引っ越す場合の残される家具や数々の品々の分配についての会話シーンだった。それに嫌気がさしアブラハムはふと思い立ちポーランドに向かう、という導入で僕の背筋はややリラックスした曲線になった。
作品は僕の好きなジャンル、ロードムービーだ。出会う人たちが優しい。
ドイツ人の文化人類学者が、ドイツの地におりたくないというアブラハムの気持ちを理解し取るある行動、そして、その気持ちを汲み取り素直になり彼が取る行動、どれも素敵だった。一見冷たそうなマドリッドのホテルの女主人の取る行動にも、優しさが滲み出ていた。
そんな旅も終盤になり、かつて住んでいた懐かしの、かつ、辛い思いでの地に到着する。様々な結果がアブラハムの心をざわつかせ、それを察するように文化人類学者が、支えてくれる。
文句なしの素晴らしい◎ロードムービーだった。