2012年3月5日

 

なくもんか
2009/日本 

監督:水田伸生 

主演: 阿部サダヲ/瑛太/竹内結子/塚本高史

 

 「男はつらいよ」や「Always 三丁目の夕日」的な匂いのする下町を舞台にした人情劇、というのがこの作品。
 主演の阿部サダヲが演じる山ちゃんは、絵に描いたようなお人よしでいい人。とはいえ、あれだけいい人だったら、ストレスは相当なもの。そのストレス発散方法は、作品後半で明らかになるのだが、僕としては意外なものだった。山ちゃんの精神性からすれば、相当違和感のある発散方法なのだが、人にはそれぞれの方法があるということでオーケー。
 山ちゃんの生い立ちは悲しい。
 山ちゃんには祐介という弟がいるが、兄弟は幼いとき家庭の事情により離れ離れになってしまう。兄の山ちゃんは、下町商店街にあるハムカツの店、デリカの山ちゃん、を営む夫婦に育てられる。夫婦は実の子供のように山ちゃんを育ててくれる。そのような背景が、遠慮がちで優しいいい人山ちゃんの性格を形成していく。
 ある日、その店の一人娘であるデブでブサイクだった徹子が二人の子供を連れて、バツイチになり突然実家に帰ってくるが、昔の面影がどこにもないほどの美人に変身していた。
 徹子を演じているのが竹内結子なのだが、ざっくばらんなテキパキさと押しの強さは、まさに下町のお母さん。彼女の演技にはとても好感を覚えた。二人は結婚することになるのだが、二人の掛け合いは絶妙で笑いを誘う。徹子の二人の子供と山ちゃん、そして徹子のお母さんを含めた新しい生活にも難題が待っている。徹子のたくましい肝っ玉母さんぶりは、まさにこの家族の支柱になっていた。
  一方、弟の祐介も山ちゃん同様苦労してきたが、今では漫才芸人として人気急上昇。そんなときの兄弟再会だった。しかし、祐介の心は頑なに山ちゃんを拒否し、昔のような関係になかなか戻ることができない中、あることが起こり最後は大団円を迎える。
 観ていて心が温まる作品だった。

 

大停電の夜に
2005/日本 

監督:源孝志 

主演:豊川悦司/原田知世 /田口トモロヲ/宇津井健

 

 日本版「ラブ・アクチュアリー」といっていいだろう。
 舞台は大停電が起こった東京のクリスマス・イブ。12人の男女それぞれが経験する一夜限りの特別な物語が描かれている。
それぞれの出来事に登場するそれぞれの人物たちが次第につながっていき、全体像が明らかにされていくこの手法は僕の好みだ。

 

 この夜に登場する人たちは次のとおりだ。

・かつての恋を待ち続けるバーのマスターと向かいのキャンドル・ショップの女店主。
・妻と愛人の間で揺れるサラリーマン。
・秘めた想いに迷っていた主婦。
・エレベーターに閉じ込められた中国人のベルボーイとOL。
・地下鉄の中の元ヤクザと妊婦。
・天体望遠鏡を覗く少年と病院の屋上に佇む少女。
・行灯の前で向かい合う老夫婦。

 

 このようなそれぞれの物語が、停電の夜に静かに進行していく。時間を費やす価値のある作品だった。
 ただし作品として観れば、僕はアメリカ作品の「ラブ・アクチュアリー」に軍配を上げる。 従って、もし両作品を観るならば、「大停電の夜に」を観てから「ラブ・アクチュアリー」を観ることをお勧めする。