2006.03

 

母ジョーイと衝突し家を飛び出た娘のエイプリ。そして今は恋人と安アパートで暮らしている。ところが、ジョーイがガンで余命いくばくもないことを知り、家族をサンクスギビングに招待することに決める。メインディッシュはジョーイの好物である七面鳥のロースト。ところが、オーブンが壊れていて料理はできない。エイプリルはアパートの住人にオーブンを貸してくれるよう頼んで各階を訪ねるのだが・・・・・・。

 

「エイプリルの七面鳥」<PIECES OF APRIL>(2003/アメリカ 監督:ピーター・ヘッジズ 主演:ケイティ・ホームズ/パトリシア・クラークソン)は、特に凝った演出や派手さはないのだが、観終わった後、なにかほのぼのした気分にさせてくれる作品だった。それは、作品テーマが“優しさ”に置かれているからだろう。家族とのちょっとした誤解や行き違いによる売り言葉に買い言葉で起きるいざこざはなどは、どこの家庭でもあるだろう。しかしこのいざこざも、よくよく考えてみれば相手を思いやるからこそ発生するものであり、根本は、やはり優しさからなのである。住人とのかかわりでいえば、オーブンを貸してくれ協力してくれる住人もいれば、その逆の住人もいる。地域コミュニティとしていい関係が保てるかどうかも、最終的には互譲の精神、つまりこれも優しさ、の部類に入るのだろう。エンディングは、協力してくれた住人たちとエイプリルの家族が七面鳥を囲み楽しいディナーとなる。誰にでも起きるような等身大的な内容が共感を覚えた理由かもしれない。

 

アメリカ映画でよく耳にするのは、サンクスギビングだ。

 

162011月、イギリスからメイフラワー号での2ヶ月に及ぶ航海後、マサチューセッツ州プリムスに到着した100人ほどの清教徒たちがいた。しかし、飢えと厳しい寒さにより翌春には半分が亡くなった。そんな清教徒らを助けたのが、先住民であるネイティブ・アメリカンだった。翌年の11月、清教徒たちは助けてくれたネイティブ・アメリカンたちを招き、収穫した作物や山で獲った野生の七面鳥や海の幸を食卓に載せてお祝いの席を開き、友人と神の恵みに感謝(サンクスギビング)した、というのが起源のようである。今、サンクスギビングデーは、11月の第4木曜日だ。ディナーのメインはローストターキー。ターキーの中に何を詰めるかは、家庭により様々。それが、いわゆる家庭の味のようである。あたりまえのことなのだが、どこの国、そしてどの家族にも、それぞれの「家庭の味」がある。