2011年3月21日

 

 

 今回は、「切なさ」と「優しさ」を感じた作品を取り上げる。

 

夜更かし羊が寝る前に ~君を捜しに行くまでの物語~
<SATELLITES & METEORITES>

2009/アメリカ
 監督:リック・ラーキン 

主演:エイミー・ハバーマン/アダム・ファーガス
 
 赤の他人である男女が別々に事故に遭い、意識不明の危篤状態で搬送された同じ病院の別々のベッドで同じ夢を共有するという、夢と現実が交錯した、ラストシーンの解釈が観客に委ねられている不思議な感じのする、とても切なさを感じる作品だった。
 彼女との時間を大切にするために、自分ができることは何なのか。彼は、自分の命に代えてまで彼女といることを決意するのだが、その願いが叶ったのかどうなのかは、まさに最後に用意されているシーンで観客自らが判断を迫られる。
 ちなみに僕は、彼ら二人の願いが叶ったというふうに解釈したい。

 

ミッシング ~消された記憶~<THE GIRL IN THE PARK>

2007/アメリカ
監督:デヴィッド・オーバーン 

主演:シガーニー・ウィーヴァー/ケイト・ボスワース 

 公園でほんのわずかな目を離した隙にジュリア(シガーニー・ウィーヴァー)は3才の娘がいないことに気づく。16年後、失意の底にいたジュリアは、ルイーズという生活にだらしのない20歳くらいの女性と出会う。いつしかジュリアは彼女に失踪した娘の面影を重ねていくのだが、彼女には娘の身体的な特徴がないことを確認する。
 そのような事実に直面したときの切なさと悲しみはとても大きいであろう。しかしジュリアは前向きに人生を歩み始めたルイーズを見ながら、いつまでも過去をひきずる自身との別れを、静かに、そして確かに告げ新たな一歩を踏み出すことを決める。
 ジュリアが一歩を踏み出しそれからも前向きに歩んでいくことは確かではあろうが、彼女の人生から悲しみが払拭されることは決してないだろう。このような悲しみを抱えながらも、一歩を踏み出し進もうとする人の姿は崇高だ。ただただ頭が下がる思いだ。

 

Dear フランキー」 <DEAR FRANKIE>

2004/イギリス
監督:ショーナ・オーバック 

主演:エミリー・モーティマー/ジャック・マケルホーン
 
 母は夫の暴力から逃れるために、9歳のフランキーとスコットランド中を転々としながら暮らしている。父と暮らせない理由は、父が船乗りだからとフランキーは聞かされている。しかし、フランキー宛に届いた手紙が、実際は母が自筆し投函していたものであることをフランキーは知らない。
 偶然にも、優しい嘘であったはずの父が乗っているはずもない船が二人の住む港町にきてしまう。そこで、母は友人を通じ見ず知らずの男性を父親として一日だけ雇うことを決意する。フランキーはその男性と非常に楽しいひとときを過ごすが、父親役の男性は出船とともに去っていく。
 ラストシーンのフランキーとその男性との手紙のやりとりには、ジーンとさせられることになる。
 この作品には、母からフランキーへ、フランキーから母へ、フランキーからその男性へ、そして、母と男性双方への暖かい想いが散りばめられている。
 それぞれの立場でそれぞれができる精一杯の気遣いと優しさが溢れた作品だった。