2008年3月23日

 前回コメントした「フリーダム・ランド」の寂寞さ重厚さとは打って変わって、ユーモア精神に溢れサラッとさりげなく、しかも明るい視点で家族を描いた作品数本を観た。僕の場合、観終わった後の満足感の高さは、このジャンルに比較的多い。

「ぼくが天使になった日」

<BRUNO>

1999/アメリカ 

監督:シャーリー・マクレーン 

主演:アレックス・D・リンツ/シャーリー・マクレーン/ゲイリー・シニーズ/キャシー・ベイツ 

 

 この作品はシャーリー・マクレーンの初監督作品。この作品での彼女は、彼女のこれまでの出演作品である、「ミラクル/バックリーの魔女たち」「イン・ハー・シューズ」「迷子の大人たち」「不機嫌な赤いバラ」に共通する、自由奔放で自分をまげない、人への気遣いを一見ひねくれた態度で実行する、ような明るい女性として登場する。自分らしさに自信を持てずいじめられている孫。その孫に男らしさが足りないと心を開かなかった父親。そんな二人に彼女が介入していくと、幸せな結末になってしまう。ユーモアとペーソスがちりばめられている作品だった。

 

「ハートブレイクホテル」

<HEARTBREAK HOTEL>

1988/アメリカ 

監督:クリス・コロンバス 

演:デヴィッド・キース 

 

 プレスリーの誘拐という突拍子もない話が進行しながら、母と息子と娘の母子家庭に、優しく暖かな、そしてエネルギッシュな風が吹き抜ける。なにかのきっかけや出会いにより、人は往々にして新しい道を見つけ歩んでいく。

「スウィート・ハート・ダンス」

<SWEET HEARTS DANCE>

1988/アメリカ 

監督:ロバート・グリーンウォルド 

主演:ドン・ジョンソン/スーザン・サランドン 

 

 結婚して20年近く経つ夫婦に、隙間風が吹き始め関係は悪化していく。その影響は息子と父の関係にも影響を及ぼす。素直に謝れない夫とつい憎まれ口を言ってしまう妻へ助け舟を出したのは、高校時代からの付き合いがあり今でも双方の親友である友人だった。すぐそばに愛され愛する家族がいる。そして友がいて、友にも愛され愛する家族がいる。子供みたいな大人たちが織り成す機微豊かな暖かい作品だった。 

 

 ところで、昨日観た次の作品は上記ジャンルとはまったく違う恐ろしいブラックジョークの作品だった。

 

 

「ジュリアン・ポーの涙」

<JULIAN PO>

1997/アメリカ 

監督:アラン・ウェイド 

主演:クリスチャン・スレイター 

 

 軽いノリで発したある言葉に責任を取らされる男とその男を見守る小さな町の人々との異様な交流が描かれている。
 無条件で他人に優しくすることと条件付優しさとの間には、天と地ほどの隔たりがある。人間の二面性と奥深さ、そして恐ろしさがいかんなく描写されていた。
 僕が一番怖ろしく感じたのは、ある女性の行動は男には救いに思われたものが、実はその女性は自分を救うためにその行動をおこしていた、ということを男が気づかずにいることだった。結果として女性の自己満足は達成されるのだが、その女性の満足がさらに男の立場を最悪なものへと追い込んでいく。
 一見すれば無償に思えるものであっても、真の意味において"無償"である確率は低い。存在したとしても、何らかのリスクの発生は否定できないだろう。これまでも、そしてこれからも、この基本は変わらないだろう。それが世の常というものだろう。