2007年4月13日

 

 1985年8月2日に起きたデルタ航空191便、ロッキード L-1011 トライスター機の墜落事故を扱った

 

ファイヤー・アンド・レイン/運命のデルタ航空191便

<FIRE AND RAIN>

1997/アメリカ 

監督:ジェリー・ジェームソン 

主演:チャールズ・ヘイド /アンジー・ディキンソン

 

を観た。
 この事故は、同機がダラス・フォートワース空港に着陸進入中、マイクロバースト(雷雲に伴う激しい突発性の下降気流)とそれに伴うウィンド・シア(風向風速の急激な変化)に遭遇した結果、機体が急激に下がり滑走路の手前1,800m地点で地面に衝突・再浮上し、そのまま高速道路に接地したもので、自動車1台を直撃した後、空港内の貯水タンクに激突・炎上し、搭乗者165名中137名と、地上の1名が死亡するという大惨事だった。
 

 作品は、機内の様子よりも墜落後の救助に携わった人々のやるせなさや遺族の悲しみにほとんどの時間が費やされていた。派手な演出は一切なく、たんたんとその現場に遭遇したそれぞれの人々の様子を綴っていた。俳優たちの演技も大げさなところはひとつとしてなく、かえってその手法が、138名もの犠牲者を出したという重い事実の認識を倍増させる。
 この事故を教訓として、マイクロバースト検出のためのドップラー気象レーダーや機上のウィンド・シア警報装置(ウィンド・シアに遭遇したことをパイロットに知らせる装置)の開発が促進されることになる。

 

 実話である

シーフォース/戦艦インディアナポリス出撃

<MISSION OF THE SHARK >

1995/アメリカ

監督:ロバート・イスコヴ 

主演:リチャード・トーマス

 

も興味深く観ることができ、史実を知るいいきっかけとなった。
 史実としては、1945年7月16日、世界初の核実験であるマンハッタン計画が、ニューメキシコ州・アラモゴードで実施された同日、広島に投下予定の原爆であるリトル・ボーイ用のウランを積んだ戦艦インディアナポリスが、サンフランシスコを出航する。26日、太平洋上のテニアン島で弾頭を陸揚げし、その後フィリピンに向けて航海。しかし29日の復路、同艦は日本の潜水艦伊-58に撃沈され乗員1200名中900名の乗組員が死亡した。
 

 作品は、撃沈されてから乗組員が救助されるまでの描写に時間を割いている。実は900名もの乗組員が死亡したのは、伊-58より発射された魚雷の命中によるものよりも、アメリカ海軍による救助の遅れが原因だったというのが真相のようだ。
 漂流すること4日間。戦艦から脱出した多くの生存者たちは次々と鮫の餌食となり命を落としていった。救助されたインディアナポリス艦長のマクヴェイⅢ世大佐は、軍法会議で「敵潜の攻撃が予測されたにも関わらず〝ジグザグ〟航行を行わなかった」として軍籍を剥奪される。後年、名誉回復し復職するが、退役後大佐は自殺してしまう。
 軍法会議後、日本の潜水艦伊-58艦長の橋本以行少佐とマクヴェイⅢ世大佐がホテルの一室で対面する。生粋の軍人である二人は、それぞれ国を背負っての任務についていた。橋本少佐にしてみれば、原爆投下を防ぐ機会を逸してしまったという無念さ。マクヴェイⅢ世大佐にしてみれば、900名の部下たちを救うことができなかった悔しさ。軍人として、それぞれの思いを抱きながらの対面だった。そんな中での橋本少佐がいった言葉は重かった。「もしテニアン島からの復路ではなく、往路で撃沈していれば、広島に原爆が落とされることはなかった」。確かに日本人だったら誰でもそう思っただろう。歴史に、もし、はないのだが、往路で撃沈していたら、多少であるかもしれないが日本の歴史は変わっていたに違いない。