2009年5月31日

 

木洩れ日の中で

<ULEE'S GOLD>

1997/アメリカ 

監督:ヴィクター・ヌネッツ 

主演:ピーター・フォンダ/パトリシア・リチャードソン

 

は、絶妙な邦題だ。このタイトルは、苦悩している家族の再生物語を容易に想起させてくれる。
 決して強い日差しではないが、確かに差し込み始めた明日への光、つまり好転するであろう状況を、木漏れ日の中で、という言葉が的確に表している。原題のULEEは主人公の名前になるが、GOLDはこの作品の舞台である養蜂場で生産されるハチミツのことであり、さらには主人公にとって、煌くほどかけがえのないもの、という意味も込められているのだろう。
 

 登場人物は、次の通り。
 妻を亡くし悲しみからいまだに抜け出せず虚無的な日々を送っている養蜂場を営む初老の主人公ユリー(ピーターフォンダ)。銀行強盗で逮捕され服役中の20代半ばのユリーの息子ジミー。両親と離れての生活が久しく続いており、おじいさんであるユリーとの生活に寂しさを感じている10歳のペニーと10代半ばの娘ケーシー。2人の子供を置き去りに家を出てしまったドラッグ付けの日々を送るジミーの妻ヘレン。離婚し新たな生活を求め都会から越してきた向かいに住む看護士の独身女性コニー。そして逮捕を免れたジミーの悪仲間たち。
 

 作品では、妻の死以来、人との関わりを捨ててしまった寡黙で愚直なユリーと、ジミー、家に連れ戻され更正し前向きに生きていくことを決意したヘレン、ヘレンからの愛情を少しずつ受け入れて行くペニーとケーシー、看護士コニーたちそれぞれとの大仰でない静的で落ち着いた相互信頼の描写がなされており、とても好感が持てた。描写が静的であるからこそ、回復していく絆の強さや重さが際立ったのであろうし、トーンを抑えた演出があったからこそ、次第に好転していく家族たちの姿を見る観客に、喝采を起こさすほどの強い印象を与えることとになったのであろう。
 この作品の舞台は養蜂場だが、作品の冒頭とエンディングでその映像が流れる。柔らかな印象を受けるほのかに琥珀色をした画面が、この作品の基調に流れている、暖かく、そして優しさに包まれた家族の愛情であることを確信させてくれる。

 

 今回の作品は、養蜂場が舞台であったため、養蜂について少し調べてみた。
 以下は、日本養蜂はちみつ協会のHPからの抜粋となる。


・ 養蜂には旧式養蜂と近代養蜂とがある
・ 旧式養蜂:自然に営まれている巣を探し、それを採集し、砕いて、はちみつを絞り取 る方式
 (数万年前から19世紀半ばまで。エジプトの古代墓からはB.C1000年以前の壷に入ったはち

  みつが発見されている)
・ 近代養蜂:はみつばちを家畜として飼育管理
・ 近代養蜂の幕をあけたのはアメリカ人のラングストロス(L.Langstroth)。氏の考案した可

  動式(取り外しのできる)巣枠がこの飼育管理を可能にした
・ 1973年にはドイツのカール・フォン・フリシュ博士はミツバチの"ダンス"の研究でノーベル

    賞を受賞
・ 世界の養蜂状況:旧ソ連地域(主にウクライナ、ベラルーシ、ロシアなど)、中国 、北米

 、ヨーロッパの諸国など温帯、亜寒帯地域で盛ん
・ 全世界でのはちみつ生産量は120万トン前後と推定中国20万トン強/旧ソ連地域 20万トン弱

  /米国10万トン前後とこの3地域で半数近い) 
・ 日本では643年に百済の太子余豊が大和三輪山で養蜂した記事が「日本書紀」にみられ、

 「延喜式」などにもしばしば現れるが、当時はおもに神饌用、薬用だった