2010年6月12日

 

グラン・トリノ」<GRAN TORINO>

2006/アメリカ 

監督:クリント・イーストウッド 

主演:クリント・イーストウッド/ビー・ヴァン

 

のイーストウッドはカッコよすぎだった。
 もちろん期待して観たのだが、それ以上のできだった。イーストウッドだからこそ、ラストに近いあの銃撃戦のシーンが嫌味にならない。ストレートにジーンときて、このオチを用意していたのか!というのが率直な感想だった。
 さらに、ラストシーンである遺産分割のシーンは、頑固な老人が感じている、病んでいるアメリカへの最大の皮肉と温情になっており、イーストウッドならではの"正義"がそこにはあった。
 作品では、人種差別主義者のイーストウッドと隣人のアジア系移民家族との交流が描かれている。
 隣人が人種差別主義者だったら困りもので、日々、恐怖を抱きながらの生活を強いられるだろうな、などと考えながら観ていたが、アジア系移民家族の娘であるスーのような明るく小気味のよいジョークとユーモアで、人種差別主義者であるイーストウッドを軽くいなしていたのは、天性のコミュニケーション能力だなとと、またまたそんなことを同時に考えながら作品を楽しんだ。
 グラン・トリノというのはフォード社の車の名前になるが、作品に登場する車は1972年製で、アメリカではこの車そのものが、古き良き時代のアメリカ、を意味する。なんのことはない、タイトルがそのまま主人公を意味していた。アメリカに精通しているわけでもない僕は、タイトルであるグラン・トリノを見たとき、アメリカにあるどこかの街だと思っていた。その街で起こる物語と勝手に思っていた。
 その国の大衆文化や価値観、イデオロギーなどを知らないと、特に今回のような作品では、監督が描きたかった奥行きやテーマを真に理解することはできない。まだまだ知識が足りないとつくづく思った。
 もっともっと本を乱読しなくては。