2009年6月24日

 

私家版

<TIRE A PART>

1996/フランス 

監督:ベルナール・ラップ 

主演:テレンス・スタンプ/ダニエル・メズギッシュ

 

は、結末を予想できる作品ではあるが、上質なサスペンスに仕上がっている。


 編集者のエドワード卿の30年来の友人、ニコラは作家である。彼が新しく執筆した小説には、この二人にしかわからない事実が描かれており、そこには30年前にエドワード卿が愛した女性の自殺原因が、ニコラによって引き起こされたものであることが示唆されていた。エドワード卿は、独自に事実関係を調べニコラによる犯罪により、愛した女性が自ら命を絶ったことに確信をもつ。ここから、エドワード卿の復讐が始まり、綿密に計画された筋書きによる完全犯罪を成し遂げ、ニコラへの復讐を果たす。
 復讐は、私家版によって遂行されていく。私家版に使用される紙の素材や匂い、旧式タイプライターの入手など、計画は緻密に実行されていく。作品の進行は、刑事コロンボの展開を彷彿させる。犯行の手順を次々と暴いていくコロンボのように、エドワード卿はニコラを陥れるために次々に罠を仕掛けていく。時間を増すごとに、ひとつひとつの仕掛けた罠が無駄なく結末へと結びついていく。
 ちなみに、私家版とは、"個人が営利を目的とせずに発行し狭い範囲に配布する書籍"のことを言う。
 
 では僕の私家版ショートショートをお読みください。テーマは、環境破壊です。

「宇宙会議」

 西暦2045年、銀河系のある星で宇宙会議が開催された。
 「地球存続についての議論は十分尽くされました。最後に、賛成、反対派それぞれの最終弁論を聞きます。それをもってみなさんは、地球存続可否の投票に移ってください」
 賛成派の代表が壇上に立った。
 「46億年前の地球誕生から、240万年前に誕生したホモ・ハビリス、そして現在の地球人にいたるまでの地球の歴史を具に見てきました。確かに、地球人は戦争が好きなようです。しかし同時に、地球人同士で大きな愛も育んできました。子供や家族、友人に対する愛の大きさは、私たちと同等、いやそれ以上かもしれません。地球人は多くの過ちを犯しましたが、その行為は一握りの心無い者たちによるものです。大多数の人々は戦争を否定しています。その願いを叶える優秀な指導者がいないことが地球の不幸なのです。希望はあります。地球は存続させるべきです」
 次に反対派が弁論を行った。
 「地球人には反省心がない。その証拠に、地球以外の惑星移住も視野に入れ始めた。さらに、衛星を好き放題に飛ばし宇宙環境を加速的に破壊している。宇宙の公共空間は、もはや安全ではない。汚染も甚だしい。地球が存続する限り、宇宙の安全は守れない。従って、地球の存続を否定する」
 投票結果が発表された。6対4で地球存続は否定された。しかし最後に、もう一度地球存続賛成派の発言が許された。
 「議長、地球人の存続否定については認めますが、空気と水と緑の豊かな星である地球の存続否定は認めることができません」
 この発言により、反対派の一部からも再投票の声があがり、存続についての検討が再度なされた。しかし、地球の存続は否定された。地球が存続する限り、地球人はいつの日かまた誕生する、との理由からだった。

 数秒後、眩い閃光が青く美しい星を包んだ。