2005年7月18日

 

空港に到着した知人や家族を出迎える人たち
それぞれの人生
世の中に嫌気がさしたらヒースロー空港の到着ゲートへ
人は言う
現代は憎しみと欲だけ、と
そうだろうか?
ここには愛の風景がある。
崇高な愛ではなく、ニュース性もない
父と子 母と子 夫と妻 恋人同士 懐かしい友人
9月11日の犠牲者が、あの時かけた電話も
憎しみや復讐ではなく、愛のメッセージだった
見回すと実際のところ
この世には愛が満ち溢れている

 

 

 

このナレーションと共に、

 

「ラブ・アクチュアリー」<LOVE ACTUALLY> 

2003/イギリス・アメリカ 

監督:リチャード・カーティス 

主演:ヒュー・グラント/ビリー・ボブ・ソーントン/エマ・トンプソン/リーアム・ニーソン

 

は、空港の到着ロビーに集う人たちのさまざまな笑顔、抱擁、キスシーンから始まった。


 僕はこのシーンで、作品に込められた思いや願いを十分過ぎるほど感じさせられ、思わずゾクッとしてしまった。そして作品は、そんな僕の期待値を裏切ることなく、いくつものさまざまな愛の形を織り込みながら、あっという間にエンディングを迎える。そのエンディングといえば、冒頭と同じシーンを使っている。さまざまな愛の形を観たあとのこのエンディングに、僕が思わず頷き、暖かい気持ちにさせられてしまったのは、創られたいくつかの物語に自分自身の物語を重ね合わせて見ていたからかもしれない。
 

ロサンゼルスの空港で目撃した光景を再現したという、この作品の監督であるリチャード・カーティスは、こんなことを言っている。
 「あれは素晴らしい眺めだった。出迎える人を待っているあいだは退屈そうに見えた普通の人々の顔に、待ち人が現れたとたん、愛と親愛の情が溢れかえるんだ。人々の複雑な人間関係が、顔に表れる。私は、この映画で、そういう真実を見せようと思った」
 

 まさにこの作品は監督の意図した通りに制作され、すくなくとも観客のひとりである僕を魅了し◎をつけさせた。僕がこの作品に魅せられたのは、ここで描かれる物語が非日常的なものではなく、いつどこで起きても不思議でない普通の物語に感じたからだろう。等身大だからこそ共感を覚え、いつのまにかバーチャルリアリティーの世界に入っていたのだと思う。

 最後に、今回の物語に登場するそれぞれのラブ・アクチュアリーな人たちを紹介しておく。
・お茶くみの秘書と彼女に恋心を抱いてしまう独身のイギリス首相デヴィッド
・夫ハリーの浮気の虫が騒ぎ出したことに気をもむデヴィッドの姉である熟年の主婦。
・ハリーと彼を誘惑する秘書
・弟に恋人を取られ、南仏へ傷心旅行に出かけるミステリー作家とそこで会うメード
・2年7カ月の間、職場の同僚を思い続けているOL
・最愛の妻を亡くしたダニエルと妻の連れ子のサム
・学校一の人気者に淡い恋心を抱きモンモンと悩む11歳のサム
・親友の新妻への思いを、ひた隠しにする新進画家
・老いぼれロック歌手とマネージャー
・アメリカ娘をものにするといい渡米するコリン
・コリンの友人トニーが助監督をつとめる映画の撮影現場で、スタンド・インとして濃厚なラブ・シーンを演じているうちに、惹かれていくジョンとジュディ

 

 どこにでもある風景っぽいところを描いているからいいんです、この作品は。もしかすると、みなさん自身の風景がここに描かれているかもしれないですね。