2010年7月24日

 

 

 2002年12月のコラムで、
<「ファニーゲーム」だが、内容は、ごく普通に生活する家族3人の元に狂気を秘めた青年2人が訪れる。そして、家族の平穏な生活が、精神的かつ暴力的に壊されてしまう、というあまりにも不条理で救いようのないほど退廃的な作品だった。猟奇的な殺人事件や残虐な事件を題材にした作品は数多いし鑑賞している。しかし、これほどまで犯人が、たんたんと精神的・暴力的殺人を犯しそれを楽しんでいる作品には、幸いにも今まで出会っていない>
 と、コメントしたくらい、2度とこの作品を上回る不快極まりない作品と出会うことはないと思っていたのだが、ホラー作品の季節になってきたこともあり、立て続けに3本の作品を観たところ、そのうち2作品に関しての不快指数は完全にファニーゲームを超えていた。

 

ストレンジャース 戦慄の訪問者<THE STRANGERS>

2008/アメリカ 

監督:ブライアン・ベルティノ 

主演:リヴ・タイラー/スコット・スピードマン
 
バイオレンス・レイク」<EDEN LAKE>

2008/イギリス 

監督:ジェームズ・ワトキンス 

主演:ケリー・ライリーー/マイケル・ファスベンダ)

-less [レス]」<DEAD END>

003/フランス・アメリカ 

監督:ジャン=バティスト・アンドレア/ファブリス・カネパ 

主演:レイ・ワイズ/リン・シェイ

 

 「ストレンジャース 戦慄の訪問者」は、深夜、見知らぬマスクを被った訪問者たちが、若い2人がいる家に突然侵入し、ただ殺すことだけを目的に執拗なまでに彼らを追いつめる。そして、捉えられた2人の運命はいかに・・・、という作品。この作品の恐ろしいところは、動機が、"ただ、2人が家にいたから"というところにある。この構図は、「ファニーゲーム」の狂気の青年2人とまったく一致する。それを上回る不条理極まりない作品だった。

 「バイオレンス・レイク」は、婚約者の2人がキャンプに出かけるのだが、そこで不運にも遭遇してしまったのは、「ファニーゲーム」の青年たちよりも、もっと若い中高生の悪ガキ集団。彼らのリーダーは、何の躊躇もなく2人に暴力をふるい、子分たちに2人への虐待を厳命する。その描写は、やはり酷すぎる。しかし、さらに救いようのないシーンが登場するのはラストになる。「ファニーゲーム」よりも退廃的で不快感極まりない、と言えるのは、そのラストがあるためだ。こんなのあるかい!と誰でもが叫びたくなるだろう。 
ラストの所業は、ともすれば人間の持つ本能と言ってしまえばそれまでかもしれない。しかし、それを本能の成せる業、と認める人は非常に稀だろう。なぜならば、人は本能を制御することができる、理性という武器をもっているのだから。

「-less [レス]」という作品も、バイオレンスホラーで上記2作品と同じ系統になるのだが、作品はシュールなバイオレンスホラーに仕上がっており、オチもついていたので、いくばくか既述作品より救われた気もするが、本質的には不快さを感じることに変わりはない。
 クリスマス・イヴの夜、家族4人を乗せた車が道に迷ってしまう。いつまで走っても、目的地につくことができないまま、次々にある出来事が起きていく。作品は、一家が恐怖と絶望に苛まれたまま、一気にオチへと向かう。そして観客は最後に監督の意図を知ることになる。

 今回の3作品に共通するのは、「不条理な暴力による死の恐怖」だった。3作品はもちろんフィクションではあるのだが、日々報道される事件を見ていると、稀ではあるが、このような内容を伴った犯罪も発生している。過去の資料を探せば、想像した以上に、この手の犯罪が起きているという事実を知ることになる。残念なことではあるが、人が存在している以上、これからもこのような犯罪は起きるのだろう。