2011年8月22日

アンバーアラート」<WIRE IN THE BLOOD: THE COLOUR OF AMBER>
(2007/イギリス 監督:ピーター・ホアー 主演:ロブソン・グリーン/シモーヌ・ラビブ)

下記を読むと犯人が推測できてしまうため、作品鑑賞後にお読みいただくことをお勧めします。

作品は、イギリスのTVドラマシリーズ「ワイヤー・イン・ザ・ブラッド」の16番目の作品だ。
第1シリーズは2002年に製作され、2008年に第6シリーズで放映が終了している。
原作者はイギリスの人気女流作家、ヴァル・マクダーミド。難解な殺人事件から派生していく複雑怪奇な人間ドラマを数多く出版している。
現在、ワイヤー・イン・ザ・ブラッドシリーズのDVDは、「キリング・シャドー」「デス・ペナルティー」「ワイヤー イン ザ ブラッド」「ウィッチ・コード」「エンジェル・オブ・デス」「クライング・ドール」「クロス・レクイエム」「9 P.M.」「シークレット・ガーデン」「シンクロニシティ」「バッド・シード」「DOMIN8 ドミネイト」「HEA7EN ヘブン」「SPIRAL スパイラル」「VOICE ボイス」「アンバーアラート」「シグネチャー」「セレモニー」「プリテンド」「アナザー クリムゾンの祈り」が出ている。今後は、「Prayer of the Bone」「Unnatural Vices」「Falls the Shadow」「From the Defeated」「The Dead Land」がリリースされていくと思われる。

 

作品概要
黒人少女が誘拐されたという通報が警察に入る。警察は裏づけを取り誘拐警報であるアンバーアラートを発令するが、無残にも少女は遺体で発見されてしまう。そこでシリーズの主人公である、犯罪心理分析官、トニー・ヒルとキャロル・ジョーダン(シリーズ1~3)/アレックス・フィールディング(シリーズ4~)が登場し、関係者の証言や証拠から複雑な事件を解決する。
犯罪心理分析官トニーには、腑に落ちない数多くのことがあった。当初は、近隣に住む性犯罪者の犯行かと思われたが、プロファイリングからは犯人にどうしてもあてはまらない。では離婚した夫の犯行なのか、あるいは、殺害された少女の友人である少年の犯行なのか。しかし、この考えもプロファイリングからはあてはまらない。
トニーは、あることに気づく。ミュンヒハウゼン症候群という症例だった。これに気づいたトニーは、一気に事件の真相を解明することとなる。

犯人と思われる複数の人物が登場し、一見、彼ら全員に動機がありそうな伏線が描かれるのだが、実はまったく違うところに答えがあり、アンバーアラートやミュンヒハウゼン症候群についても知ることができた見応えのある作品だった。
日米では司法制度や刑罰の考え方が異なるため、同一のものは難しいだろうが、児童誘拐・殺害事件が起きている日本でも、アンバーアラートに似た仕組みは必要と考える。
ミュンヒハウゼン症候群については、愛知県青い鳥医療福祉センターのwebページにある、てんかん>作話てんかん(代理によるミュヒハウゼン症候群)のページが非常に詳細で充実している。さらにミュンヒハウゼン症候群について知りたい方へはお勧めのページだ。

 

アンバーアラートについて(ウィキペディア)

アンバーアラート (AMBER Alert) とは、児童(未成年者)誘拐事件及び行方不明事件が発生した際、テレビやラジオなどの公衆メディアを通じて発令される緊急事態宣言(警報)の一種。また、その発生そのものを地域住民に速やかに知らせる事で、迅速な事件の解決を目指そうとするシステムそのものを指す場合もある。
児童誘拐事件の多くは犯行後に児童が殺害される場合が多く、誘拐発生時からいかに短期間で場所を特定出来るかどうかが重要であるとされている。
主にアメリカ合衆国やカナダで運用されており、児童誘拐事件の解決に一定の成果を上げている

アンバーアラートを発令すべき事態、すなわち児童誘拐事件が発生すると、管轄の警察機関は所定の手続き(後述)を踏んだ後、アンバーアラートを発令する。発令と同時に、ラジオ局・ケーブル及び地上波テレビ局やEmergency Alert System(EAS)、および任意登録者のEメールアドレスや道路上に設置された電光掲示板など、あらゆるメディアを通じてアンバーアラートが当該地域およびその周辺の住民に対して知らされる。 特にテレビ局やラジオ等の公衆メディアについてはアンバーアラートが発令されると、通常の番組を中断し、緊急のアンバーアラート放送を行うなど、強力な対応が取られる。これは大きな被害が予測される自然災害(竜巻や雷雨など)の発生時と同程度の対応である。
アンバーアラートの配信の際には同時に、誘拐犯および誘拐された児童の氏名や特徴、誘拐犯の車両のナンバープレートなど、犯人及び被害者を特定する為のさまざまな情報も同時に提供され、住民からの通報を促す事で事件の速やかな解決を目指す。

ちなみに、"AMBER"とは"America's Missing: Broadcasting Emergency Response"のアクロニムであると同時に、1996年にテキサス州アーリントンで誘拐・殺害された少女「Amber Hagerman」の名にちなんだダブルミーニングであると言われる。例外として、ジョージア州ではLevi's Call、ハワイ州ではMaile Amber Alert、アーカンソー州ではMorgan Nick Amber Alertなど、異なる名称で呼ばれる場合もあるが、それぞれその州で発生した児童誘拐(殺害)事件の被害者にちなんだ命名となっており、いずれも児童誘拐事件の速やかな解決及び被害者の救助を目的としている点に変わりはない。

1996年1月、テキサス州に住む少女、Amber Hagerman(当時9歳)が誘拐される事件が起きた。地元警察は犯人や誘拐された少女の特徴を把握しており、それらの情報が早期に地域住民に知らされていれば彼女を発見出来る可能性は高かった。しかし、それらを住民に知らせるインフラは当時整っておらず、対応は大きく遅れた。結果、彼女は強姦され、殺害されてしまう。この事件以降、児童誘拐事件の発生を地域住民に速やかに知らせる為のシステムを求める声が高まった。

誤謬を回避し、信頼性を維持する為に殆どのアンバーアラートの発令には厳格な規則が定められている。米国の場合、アンバーアラートは各州や自治体が管理するものである為、その運用や規則は管理主体によってそれぞれ異なるが、米国法務省(U.S.DoJ)は「準拠する事を推奨する」以下のガイドラインを定めている。
・法執行機関(警察など)が誘拐発生の事実を確認しなければならない
・誘拐された児童が身体や生命の危険にさらされている事が明らかでなければならない
・誘拐された児童および誘拐犯に関する明確な情報が無ければならない
・誘拐された児童は17歳以下でなければならない
*多くの法執行機関は2番目のガイドラインを採用していない。

 

ミュンヒハウゼン症候群(Munchhausen syndrome)について(ウィキペディア)

ミュンヒハウゼン症候群は自分に周囲の関心を引き寄せるために虚偽の話をしたり、自らの体を傷付けたり、病気を装ったりする症例の事。ビュルガーの著作から「ほら吹き男爵」の異名を持ったドイツ貴族・ミュンヒハウゼン男爵(実在)の名前から付けられている。1951年にイギリスの医師、リチャード・アッシャーによって発見され命名された。
自分以外を傷つけ、周囲の関心を引き寄せるのは代理ミュンヒハウゼン症候群と呼ぶ。
ミュンヒハウゼン症候群には、虚偽の病気に罹患している対象が患者自身であるミュンヒハウゼン症候群と、近親者(母親の子供に対するケースが多いが、配偶者などのケースもある)を病気に仕立て上げる、代理によるミュンヒハウゼン症候群の2種類が存在する。

厚生労働省の平成20年度の統計によれば、心中以外で虐待死した児童67人中4.5%にあたる3人の児童が代理によるミュンヒハウゼン症候群により死亡しており、決して無視できる数字ではない。  

一般的に虚偽性障害の中で身体的症状が優勢で、慢性的で重篤な症状のものをミュンヒハウゼン症候群と診断する。精神病的エピソードを作り出すケースも存在する。
患者は病気を創作もしくは既に罹患している病気を殊更に重症であるように誇張し、病院に通院・入院する。一つの病気の問題が解決、虚偽が見破られたり、小康状態に陥ると更に新たな病気を作り出す。重篤な患者と見せかける為に自傷行為や検査検体のすり替え、偽造工作と言ったものを繰り返し行うことがある。
患者はケガや病気という口実を利用して周囲の人間関係を操作することを目的にして、同情をかったり、懸命に病気と闘っている姿を誇示する。また、病気に関わる事、関わらない事に関係なく独特の世界を作り上げるエピソードを創作する空想虚言癖を伴う事が多い。患者のエピソードによる病歴は多彩であり、多種多様な既往歴を話す事が多い。ただしそのエピソードや時期に関しては曖昧な事が多く、時期や内容も話す相手によって異なる事が多い。また、ミュンヒハウゼン症候群の患者には手術の繰り返しによって作られた独特な手術痕が見られたり、繰り返し同じ場所に対して自傷行為を行ったために残った褥瘡などが確認される事がある。

患者は、自らの診断と病院の診断が異なった場合、病院をすぐに変えるドクターショッピングを日常的に繰り返し、検査や手術などを繰り返す。また、様々な診療科を受診するなどの行動を行う場合がある。そのため、病院遍歴を調べなければミュンヒハウゼン症候群を見つける事は難しく、患者の発見は主に入院・検査時の自傷行為・検体のすり替えの目撃・発覚などによって、初めてミュンヒハウゼン症候群の疑いがもたれるケースが多い。大半の症例は精神科ではなく内科・外科と言った診療科で発見される。
この病気は境界例などの人格障害との関わりが指摘されているが根本的な治療法は確立していない。ミュンヒハウゼン症候群に罹患するきっかけは小児期の手術の経験である事が多く、そのときの記憶から相手の同情や気を引くために手術や入院を要する病気を作り出す行為を繰り返す事が報告されている。
ミュンヒハウゼン症候群の患者は、虚偽の病気による手術や入院を繰り返すため治療による薬や手術の副作用、慢性的に病気を作り出す行為を繰り返し、それらの副作用が蓄積されていくため予後は良くない。

似たような病気に詐病が存在するが、詐病とミュンヒハウゼン症候群の大きな違いはミュンヒハウゼン症候群が病気になること・病気によって同情を引くといった精神的利益を目的としているため手術や検査といったリスクをいとわず、むしろ積極的に協力する点が大きな違いとして上げられる。詐病の場合は、病気になることにより主として経済的利益の享受などを目的とするため大きなリスクを避ける傾向にある。