2009年8月25日

 

ウィットネス・プロテクション 証人保護」

<WITNESS PROTECTION>

2000/アメリカ

監督:リチャード・ピアース

主演:トム・サイズモア/フォレスト・ウィッテカー

 

を観た。 

 証人保護を背景にした作品は数多く観ているが、この作品のように、FBIにより管理されるシェルターと呼ばれる施設を舞台にした証人保護プログラムを観たのは初めてだ。
 保護される対象者が、どのような場所に連れて行かれ、どのような部屋で暮らしをし、どのような訓練を受けるのかがよくわかり、とても興味深い作品だった。
 

 作品は、突然、証人保護プログラムを受けることになる4人家族の葛藤を軸に描かいている。犯罪組織に所属している夫であり父でもあるパットンは、組織への裏切り行為を疑われ命を狙われる。家族を守るために彼が決断したことは、FBIの証人保護プログラムの傘下に入ることだった。
 プログラムは家族にとって大変過酷なものだった。それまでの生活や身分を完全に封印し、まったく別の人物を演じる必要がある。ふとした会話にも、過去を語ることは許されず偽りの過去を語らなければならない。子供たちにとって一番辛いことは、昨日までの友達や恋人に会うことはもちろん、連絡も告げず、忽然と姿を消さなくてはならないことだった。
 シェルターでの生活は、24時間、カメラにより監視されており、自由にその部屋から出ることもできない息が詰まるような生活を強いられる。身分を偽るための作り話や会話も習得する必要がある。犯罪組織から身を守るためには、それくらい徹底したプログラムが必要ということだ。
 作品は家族の葛藤と並行しながら、プログラム担当者の苦悩も描かれている。プログラムに耐えられなくなったパットンや彼の息子のプログラム離脱意志を撤回させることや、これまで抑えてきたやりきれない感情が爆発してしまい我を失うパットンの妻への対応は、プログラム担当者にも相当ハードなものだった。
 作品では、プログラムを終了した家族が施設を出ていく車を後ろからのアングルで捉えるというエンディングなのだが、観ている側としては、このアングルは始まりとしか思えないカットとなった。

 

 米連邦証人保護プログラムについて簡単に触れておく(ウィキペディア参照)


 US Federal Witness Protection Program(WITSEC)が正式名称。1970年の憲法修正第5条により制定されたアメリカにおける法廷や上下両院での証言者を保護する制度のことで、マフィアの「血の掟」から証言者を保護する目的で設けられた。
 該当者は裁判期間中、もしくは状況により生涯にわたって保護されることとなり、被保護期間中は、住所の特定されない場所に政府極秘の国家最高機密で居住する。
 期間中の生活費や報酬などは全額が連邦政府から支給される。プログラム終了後は、内通者による被保護者の身分や居住場所が特定される危険を防ぐために、パスポートや運転免許証、社会保障番号まで全く新しいものが交付され完全な別人になる。
 被保護者の中でもとりわけ、アメリカの国益に多大なる貢献をした者は相当裕福な経済的援助を受けることもある。
 居住の場所はアメリカ合衆国内にとどまらず、ラテンアメリカ各国や、在外の米軍基地内、EU領内などのNATO軍の官舎等が割り当てられることも多々ある。