2006年8月27日

 

 

 この2週間で観た作品には○が多かった。ジャンルは家族、青春、恋愛といったところだ。


 「恋人までの距離(ディスタンス)」<BEFORE SUNRISE>

1995年/アメリカ 

監督: リチャード・リンクレイター

主演:イーサン・ホーク/ジュリー・デルピー

 

「ビフォア・サンセット」<BEFORE SUNSET>

2004年/アメリカ 

監督: リチャード・リンクレイター

主演:イーサン・ホーク/ジュリー・デルピー

 

は、躍動感にあふれた大人の恋愛映画だった。


 前者は1995年の制作で続編の後者は2004年の制作だ。実際に続編が制作されるまで9年が経っている。続編の内容も最初の別れから9年が過ぎ、再開するところから始まる。


 恋人までの距離(ディスタンス)」の作品概要は、二人の男女、アメリカ人のジェシーとフランス人のセリーヌが偶然列車で出会う。いっしょにいたいと思う気持ちは同じで、急遽二人は途中下車しウィーンの街を歩く。次の朝には二人とも本来の目的地に向かわなければならない。時間は次第に迫ってくる。カメラはこの二人の会話を徹底的に拾い上げる。俳優が演技をしているのだから会話が自然で観客が引きこまれるのは当然のことかもしれないのだが、あまりにも二人の会話が自然すぎてこの二人は本当の恋人同士なのかと思えるくらい、機微のある二人の幸せな会話が続く。
 この会話のなかにそれぞれの思いを託しさりげなく自分の人生観や価値観を登場させ、お互いの理解への一助とする台詞を語らせるシナリオに、とにかく観ていてワクワクさせられた。いよいよ別れの時がくるが、未来につながる終わり方で観客に期待を持たせる。


 「ビフォア・サンセット」<BEFORE SUNSET>

 9年後の2004年に、同じ監督、主演が再度コンビを組み続編が制作される。

 前作のラストシーンから9年が経ち二人は再会するが、今回二人にはわずか85分しか時間がかない。そのわずかな時間を惜しむように、前作同様、絶妙な会話が切れ間なく続く。続編制作までに9年が過ぎているが、作品内容でも同じ時間が過ぎているため、ジェシーもセリーヌも実際に9歳年を重ねていることが、映像としても非常にリアル感があり、こういう作品の作り方もあるものなのかと感心してしまった。二人は85分間パリの街を散策するのだが、過ぎ去った9年の空白時間と9年前の思い出を語りそれぞれの人生を振り返り、そしてまた新たな気持ちで現実の生活へと戻っていく。


 大人の恋愛映画といえば、

日の名残り」<THE REMAINS OF THE DAY>1993年アメリカ、主演:アンソニー・ホプキンス/エマ・トンプソンをあげることができるが、この作品の場合、主人公が初老であるためあまりにも時間軸が長すぎてしまい、僕の年齢ではちょっと現実感が伴わない。
 そのような観点からすれば、「BEFORE SUNRISE」「BEFORE SUNSET」は、僕にとってやけにリアル感のある大人の恋愛作品だった。

 実に絶妙、当意即妙な率直で自分たちを隠さない会話、それでいて相手を思いやる大人の会話というのを十分に楽しむことができた。原題からもわかるように、限られた時間という設定は、まさに作品に緊張感やテンポを与える手法であり、この監督は9年という時間もそうだが、実にうまく時間を使いこなす監督なのだな、というのが僕の印象となった。


 次回も同じテーマである恋愛、そして新たに、青春、家族を描いた作品について触れてみたい。