2013年9月16日

ザ・クリミナル 合衆国の陰謀

<NOTHING BUT THE TRUTH>
2006/アメリカ

監督:ロッド・ルーリー

主演:ケイト・ベッキンセイル/マット・ディロン

 

 <概要 Amazonから>
【大統領暗殺未遂事件が勃発。大統領はCIA報告を受けベネズエラの暗殺計画への関与を断定した。ジャーナリストのレイチェルは、あるルートから情報を入手し、この事件に関わるCIAスパイの身元を暴露する記事を書いた。政府からその情報の提供の開示依頼がきたが、拒んでいた。ある日、息子を学校へ送っていたところFBIに同行を要請され、検察官のパットンに尋問されるが、頑なに拒否したため刑務所へ。疑惑は晴れないまま、刑務所に入ることで妻として、そして母としての権利をはく奪されながらもジャーナリストとしての権利を守るレイチェル。執拗にパットンが守ろうとする国家秘密とは?そして情報提供者はいったい誰なのか?】

 

国家権力と対峙することを選択したため、拘置所、そして刑務所へと収監されてしまう女性記者。それでも彼女は情報源の秘匿を貫いた。
何故、そこまでして?
エンディングですべてが判明する。
このエンディングにいたる非常に見事な伏線に僕は冠服した。

 

女性記者vs国家権力・犯罪組織・大企業のような構図の作品は数多く制作されている。
この作品に僕が○評価を付けた理由は、登場人物たちの駆け引きを通し、アメリカの司法制度の仕組みや運用についての描写がさまざまな場面でされており、この事件の全体構図をよりわかりやすく理解させてくれたからだ。
いかにして権力側が彼女から情報源を合法的に引き出すのか。物語で彼女に対し権力側が行使する手段を見ていると、執拗ないじめのようにしか見えないのだが、その手法に違法性はない。


 違法性がない大きな根拠は、後半の最高裁審理シーンで弁護人から語られる。
また、弁護人がその弁論に使う、表現の自由、という単語が、それを具現化しようとする言葉を超えた彼女の行動に対する強い意思と姿勢をクローズアップさせている。

やや長くなるが、彼女(アームストロング)の真髄を代弁しているこのシーンから引用する。

 「1972年のブランズバーグ対ヘイズ事件で最高裁は、記者の大陪審に対する証言拒否権を否定しました。この判決により政府は記者を投獄できるように。判決は5対4と際どいものでした。当時のスチュワート判事はこう述べています。これで政府の力はより強大になる。そして権力を握る政治家たちはそれを守ろうとする。犠牲となるのは国民だ。彼の言うとおり、今、政府の力は巨大です。アームストロング氏も政府に屈服し情報源を明かしていてもおかしくなかった。家に帰るために。しかし、それでは誰も彼女や彼女の新聞社に情報を明かさなくなる。そして同じことが別の新聞社の記者にも起こり新聞は機能を失います。つまり表現の自由の失墜です。そんな状況で大統領や軍医よる不正を見抜くことができるでしょうか。国を操る権力者たちは民衆からの信用など必要がなくなるのです。考えても見てください。国民の目をきにしない政府、とても恐ろしい。記者の投獄など他国の話であり民衆を恐れる国家のすることです。国民を守り慈しむ政府には無縁だ。私は少し前から感じ始めていました。依頼人の精神に負担がかかっていることを。そのため、私が守るのは君で主義じゃない、と言いました。しかし、偉大な人物にとって主義こそ命であると彼女は気づかせてくれました」

 

女性記者を主人公にした他の○評価作品を上げておく。

 

 「ライフ・オブ・デビッド・ゲイル」(wikipedia)
 死刑廃止論者である元大学教授のデビッド・ゲイルが、元同僚の女性コンスタンスをレイプ・殺害した容疑で死刑宣告を受ける。彼は自らの手記を綴るため、女性新聞記者ビッツィーを呼び寄せる。ゲイルの話を聞くうちに、ビッツィーは彼は冤罪ではないかと考え始めた。

 

ヴェロニカ・ゲリン」(wikipedia)
1994年、アイルランドでは麻薬関連の犯罪が急増しており、常習者は青少年を含む1万5千人とも言われていた。この年、サンデー・インディペンデント紙の女性ジャーナリストであるヴェロニカ・ゲリンは麻薬犯罪に関する記事を書き始めた。彼女はギャングと麻薬の関係を突き止めるために裏社会に深く踏み入ったため、種々の脅迫や暴行を受けることになる。これに屈しない彼女を恐れた麻薬の元締めであるジョン・ギリガンは、1996年6月26日に刺客を放ち、ヴェロニカはその凶弾に倒れた。しかし、彼女の死を契機にアイルランド国内に麻薬犯罪撲滅の気運が高まり、憲法改正等も行われ麻薬犯罪は減少した。

 

ボーダータウン 報道されない殺人者」 (Amazon)
シカゴの新聞社で働く女性記者のローレンは、メキシコとアメリカの国境の街、フアレスで起きている連続女性殺害事件の取材を命じられる。そこで彼女を待ち受けていたのは、汚職にまみれた警察や政治家の支配の下、真実は闇に葬られるという社会であった…。そんな中、かつてのビジネスパートナーのディアスが営む新聞社だけは真実を報道しようとしていた。だが、真相究明の糸口をつかもうとする彼女たちの前に、巨大な壁が立ちはだかる。