2003年9月24日

僕にとってひとりの俳優をさまざまな作品で見ることは、映画を観る楽しみのひとつでもあるのだが、最近そのようなことを感じた俳優が数人いた。まずは女優から。
 ひとり目はブリジット・フォンダだ。1964年生まれの彼女の祖父は、ヘンリー・フォンダ。叔母がジェーン・フォンダ。そして父親がピーター・フォンダという俳優一家に生まれている。彼女の作品はあまり多く観ていないのだが、何作か記憶に残っているものがある。僕の彼女に対する記憶の残りかたは、まず、彼女が美人でキュート、そして優しい笑顔の持ち主あること。次に、違う役柄を実にうまく演じる器用な役者というものだ。

 

つい最近観た(作品としてはつまらなかった)

 

スノークイーン~雪の女王~

<SNOW QUE>

2002/アメリカ
監督:デヴィッド・ウー
主演:ブリジット・フォンダ/ チェルシー・ホッブス

 

では、彼女は徹底的に憎らしく真に冷たい意地悪な雪の女王を演じていた。この女王とても憎らしいのだが、実に美人。絶世のといってもいいだろう。この彼女を観た男性ならブリジット・フォンダのファンになること間違いなし。この作品で彼女に笑顔はない。笑顔のない彼女なんて。ところが冷酷で無表情な彼女の表情も、矛盾しているのだが、かわいく見えてくるから不思議。では、彼女のステキな笑顔を観ることができる作品はというと、「グレイスランド」「あなたに降る夢」があった。  

 

グレイスランド

<FINDING GRACELAND>

1998/アメリカ
監督:ジョナサン・シェック
主演:ジョナサン・シェック/ハーヴェイ・カイテル/ブリジット・フォンダ

 

は、妻を交通事故で亡くした主人公バイロンが、メンフィスへ向かう途中でエルビスと名乗るヒッチハイカーに出会う。彼とエルビスを名乗る男との少し切ないが、生きることの大切さを描いたロードムービーだった。では、僕の好きな彼女の笑顔のシーンはというと、ラストに近いシーンでバイロンと再開するときの、あの笑顔がそうだ。

あなたに降る夢

<IT COULD HAPPEN TO YOU>

1994/アメリカ
監督:アンドリュー・バーグマン
主演:ニコラス・ケイジ/ブリジット・フォンダ

 

は、主人公がコーヒーショップでウエイトレスに渡すチップがなかったため、持っていた宝くじが当選したら半分を渡すことを彼女に約束する。そして400万ドルの大当たり。そしてそこから始まるコメディタッチのロマンス。彼女の最高の笑顔は、チップが200万ドルと聞いたときの、あの笑顔だった。

そんな笑顔とは裏腹に恐怖の表情が印象的だったのが、

 

ルームメイト

<SINGLE WHITE FEMALE>

1992/アメリカ
監督:バーベット・シュローダー
主演:ブリジット・フォンダ/ジェニファー・ジェイソン・リー

 

 都会的なアリー(ブリジット・フォンダ)はルームメイトを募集。そしてあか抜けしないへディと部屋をシェアすることになる。ところが、へディはアリーの服装から髪型まで真似るようになっていく。さらに、それだけでは止まらず・・・。なんとなく起こりそうな身近な恐怖が実によく描かれていた。アリーが自分の髪型を真似たへディを見たときの恐怖の、そして困惑した表情を作っていたのが、あのかわいらしい笑顔をもっている女性と同一人物とはとても思えなかった。
 

以下は彼女の出演作品で、青は僕のお勧めだ。

 

キス・オブ・ザ・ドラゴン(2001)
モンキーボーン(2001)
U.M.A レイク・プラシッド (1999)
赤い標的 THE BREAK UP(1999)
シンプル・プラン(1998)
グレイスランド(1998)
フォーエヴァー・ライフ/旅立ちの朝(1997)
ジャッキー・ブラウン(1997)
訣別の街(1996)
グレイス・オブ・マイ・ハート(1996)
Touch タッチ(1996)
バルト(1995)  ―アニメで声優としてー
ラフ・マジック(1995)
あなたに降る夢(1994)
カミーラ/あなたといた夏(1994)
ケロッグ博士(1994)
アサシン(1993)
キャプテン・スーパーマーケット(1993)
リトル・ブッダ(1993)
恋愛の法則(1993)
シングルス(1992)
ルームメイト(1992)
アイアン・メイズ/ピッツバーグの幻想(1991)
ドク・ハリウッド(1991)
レザー・ジャケット(1991)
フィービー・ケイツの 私の彼は問題児(ドドンパ)(1991)
アウト・オブ・レイン(1990)
ゴッドファーザーPART III(1990)
フランケンシュタイン/禁断の時空(1990)
スキャンダル(1989)
ストラップレス(1989)
21ジャンプ・ストリート(1988~1989)
恋はあせらず(1988)
シャグ(1988)
アリア(1987)

 

 

 二人目の女優にいこう。

 ダイアン・レインを取り上げる。


 彼女は1965年ニューヨークに生まれる。父親は、演劇教師、母親はプレイメイトにもなったことのある元モデル。6歳から演劇の勉強を始め、オフ・ブロードウェイの舞台にも出演。14歳の時、79年の「リトル・ロマンス」で映画デビュー。82年の「アウトサイダー」、83年の「ランブルフィッシュ」、84年の「コットンクラブ」とF・コッポラ監督作に続けて出演。現在までの出演作品は37本。
 最近観た彼女の作品は、リチャード・ギアと競演しアカデミー主演女優賞にノミネートされた「運命の女」。原題は「Unfaithful」。不誠実という意味だ。
この作品の対比としてまっさきに浮かんだのが、彼女のデビュー作品で、誠実に純粋な女の子を演じた「リトル・ロマンス」だった。初出演から23年も経っており当然容姿は変わっているのだが、僕にとってダイアン・レインのイメージはリトル・ロマンスだったので、ずいぶん大人になったなというのが率直な感想だった。

 「運命の女」では、大胆なベッドシーンが話題にもなったが、もしそのシーンについてのみ話すのなら、「愛は危険な香り」で見せる肢体の方がもっと妖艶だった。
 思うのだが、どうも最近の彼女の作品では底抜けに明るい笑顔が見られない。

「陽だまりのグラウンド」

「グラスハウス」

「パーフェクト ストーム」などは、もともと笑えるような脚本ではないから仕方がない。ただ彼女もときにはシリアスな役ではなく、もう少し笑顔が多い役を演じたらいいと思うのだが。

 彼女はどことなくジュリア・ロバーツを思わせる。

 ジュリア・ロバーツの笑顔がすばらしいことは「プリティ・ウーマン」を観ればお分かりのように、本当に楽しく幸せそうな笑顔を作る。しかし以降の作品ではシリアスな役が多く、どうも湿り気の多い役も多かったし、また作品にも恵まれなかった。

 それが「エリン・ブロコビッチ」では、破天荒な弁護士を演じてアカデミー主演女優賞をはじめ、ゴールデン・グローブ、LA批評家協会賞を受賞した。まあ、こうまでうまくいくかどうかはわからないが、ダイアン・レインもテンポの速い明るく楽しめる脚本を選んで出演してみたらどうだろうか。

 ちなみに初期の彼女の作品に僕のお気に入りが多い。以下は彼女の出演作品で、青は僕のお勧めだ。

 

運命の女(2002)
デブラ・ウィンガーを探して(2002)
陽だまりのグラウンド(2001)
グラスハウス(2001)
パーフェクト ストーム(2000)
マイ・ドッグ・スキップ(2000)
ヴァージニアン/落日の決闘(2000)
オーバー・ザ・ムーン(1999)
デッド・ロイヤル(1998)
ホワイトハウスの陰謀(1997)
イン・マイ・ライフ(1997)
ジャック(1996)
マッド・ドッグス(1996)
ジャッジ・ドレッド(1995)
欲望という名の電車(1995)
ワイルド・ビル(1995)
南部の風・南軍兵士の妻が語る100年の物語(1994)
インディアン・サマー/タマワクの英雄たち(1993)
堕ちた天使たち①(1993)
美しき獲物(1992)
チャーリー(1992)
マイ・ニュー・ガン/あぶない若妻(1992)
落陽(1992)
愛と青春の鼓動(1990)
引き裂かれた天使(1990)
ロンサム・ダブ(1989)
愛は危険な香り(1987)
ダイアン・レイン/愛にふるえて(1987)
ビッグタウン(1987)
コットンクラブ(1984)
ストリート・オブ・ファイヤー(1984)
アウトサイダー(1983)

ランブルフィッシュ(1983)
アメリカン・ビューティ(1982)
幸福のチェッカー(1982)
ラスト・レター(1980)
リトル・ロマンス(1979)

 

 当然のことながら彼女たちは俳優である以上、さまざまな役柄を演じる。どの役柄が適役かの判断はもちろん観客の好みにもよる。しかし、比較的多くの観客から支持される役柄、作品があることも事実だろう。それはおそらく脚本のよさであり、共演者とのバランスなどもひとつの要因だろうが、最大の要因は、やはりその役に彼女たちがはまりきっているからではないだろうか。はまりきっているということは、自然で等身大の演技、もしくは演技とは思えないくらい地でいっているような印象を与えるということだ。つまり、スクリーンでは演技をしていることをわかって観ていても、それが演技には見えず、まさに本人そのもののように感じることができたとき、僕はその役をはまり役と呼ぶことにしている。