2010年5月4日

 

リリィ、はちみつ色の秘密

<THE SECRET LIFE OF BEES>

2008/アメリカ 

監督:ジーナ・プリンス=バイスウッド 

主演:クイーン・ラティファ/ダコタ・ファニング

 

は僕好みの作品だ。
 作品は、様々な経験を通し少しずつ大人へと成長していく少女の物語とそれにかかわる黒人三姉妹との温かいまなざしで満ちた心の物語だ。
 主人公は、14歳の少女リリィで、舞台は60年代のアメリカ南部。リリィは4歳のとき誤って母親を射殺してしまう。暴力を振るう父親との暮らしに疲れ果て、黒人家政婦のロザリンと家を飛び出す。向かった先は、かつて亡き母がいたと思われるティブロンという街。リリィはそこで養蜂場を営む黒人三姉妹の家に泊めてもらうことになる。

 三姉妹の名前は、オーガスト、ジューン、メイと月の名前。リリィの荒んだ心は彼女たちとの交流により、次第にほぐれていくのだが、あることが原因で一人が亡くなってしまう。責任を感じたリリィは再び絶望の淵に立ち、やりようのない気持ちを爆発させる。しかし、そんなリリィをまた優しく包み込んでくれたのが、リリィの母を知っていたと語ってくれた包容力溢れるメイだった。メイから亡き母のことを聞いたリリィは、長年彼女の心にあったあるわだかまりがスッと消えていくのがわかった。人前で泣いたことがないリリィは、メイの胸で心の洗濯を思う存分する。


 人種問題も描かれてはいるが、テーマはそれではなく、親と子の絆の複雑さ、もろさであり、真の強さである。 


 4歳の少女が背負った心の傷はあまりにも大きかった。そして10年が過ぎた14歳でも、その傷を癒せるどころか、さらに傷には塩が塗りつけられるような事態が待ち受けており、日々の生活は悪化の一途を辿る。
 リリィは白人家庭に生まれ育ったが、ある事情で母親が家出をして以来、いいことなど何ひとつない日々を送っていた。一方、南部に住む黒人三姉妹は人種差別が横行している時代で、彼女たちには良くない時代であったにもかかわらず、心豊かに、そして気高く時代を生き抜いてきた。

 

 作品では三姉妹の詳しい過去は描かれていないが、時代背景から彼女たちに行われたであろう差別の数々は容易に想像がつく。さんざん嫌な辛い思いもしてきているだろう。三姉妹は肩を寄せ合い必死で生きてきたに違いない。差別や嫌がらせを受けながらも、時代や白人に屈することなく生き抜いてきた彼女たちだからこそ、他人の苦しみや辛さを放っておくことができなかったのだろう。


 毎回のことだが、悪しき環境に身を起きながらも諦めず屈服することなく、逆に立ち向かい自身を高めていくような系統の作品は、観ている間中、僕自身を凛とした気分にさせてくれる。